コミュニケーションの基本と9つの構成要素

近年、ビジネスシーンではコミュニケーションの重要性が高まっています。

これまでは、職場の活性化や顧客との良好な関係性を構築するためにコミュニケーション能力が求められてきましたが、近年では精神的な課題を抱える人も増え、特に管理職層には益々コミュニケーション能力が求められるようになってきました。

そこで、この記事では、相手と良好な関係を築き、こちらの意見を伝え、望ましい姿にリードするためのコミュニケーションの基本と、そのために用いられる構成要素について見ていきます。

コミュニケーションの基本

コミュニケーションの基本は、「分かり合う」ことです。コミュニケーションは1対1、または、1対多との間で自分の考えを伝えたり、相手から受け取ったりすることによって行われます。

これらは、言語(言葉)と非言語によって行われ、自分の考えを伝えたり、相手の考えや状況を受け取ったりしながら、お互いの意思を確認し合います。

さらに、ビジネスシーンでは、「分かり合う」だけではなく、「アドバイス」「要求」「提案」「命令」「依頼」など、こちらの意見を伝え、課題を解決したり、望ましい姿にリードしたりする必要があります。

コミュニケーションの基本的な構成要素

「分かり合う」ためには、まず、相手との良好な信頼関係が必要です。信頼関係ができることで、こちらの意見を受け取ってもらいやすくなります。

コミュニケーションの基本的な構成要素は次の2つに大別できます。

相手との間に信頼関係を作る

信頼関係とは、「心と心の距離を縮める」ことです。

中のいい友人と楽しいおしゃべりをするなら、あまり気にすることはありませんが、それほど関係が深くない相手と分かり合うためには、まず、相手と信頼関係を築く必要があります。これを、心理学用語では「ラポール」と言います。「ラポール」とは、心と心の距離を縮めることです。

信頼関係が築かれと相手とよい関係ができるため、相手の状態や本心を知ることができます。

また、こちらの意見を相手に伝え、望ましい姿にリードするときには、こちらの意見を受け取ってもらうためのベースとなります。

自分の意見を伝え、相手を望ましい姿にリードする

相手との信頼関係ができたら、「アドバイス」「要求」「提案」「命令」「依頼」など、こちらの意見を伝えます。

コミュニケーションの基本的な流れ

「相手との間に信頼関係を作る」と、「自分の意見を伝え、相手を望ましい姿にリードする」は、さらに細かく分けると、次の9つに分けることができます。

  1. 観察する
  2. 合わせる
  3. 聞く
  4. 問いかける
  5. 融合する(共感する)
  6. リードする(自分の意見を伝える)
  7. 気づきが生まれる
  8. 行動に結び付ける
  9. 望ましい姿になる

けれらを図にすると、次のようになります。しごとのみらいでは、このモデルを「コミュニケーションU」と呼んでいます。それぞれについて解説します。

ステップ1:観察する

相手がどのような状況にあるのかを観察します。相手が発している言葉(言語)に加えて、表情や声のトーンなど、非言語の情報もよく観察します。観察することによって、相手が置かれている状況が把握できます。また、信頼関係が築かれたか否かを知ることもできます。これを専門用語では「キャリブレーション」と呼びます。

詳しい内容は、コミュニケーションの基本「観察力」の鍛え方でも紹介しています。

ステップ2:合わせる

相手が発している言葉や、表情や声のトーン、体の使い方などを相手に合わせます。「故郷が同じ」「趣味が同じ」など、人は「合う」ということに親しい印象を抱く傾向があるため、意識的に相手に合わせ、話しやすい空気や親近感を作ります。これを専門用語では「マッチング」と呼びます。

詳しい内容は、信頼関係(ラポール)を築く8つのポイントでも紹介しています。

ステップ3:聞く

相手との間に親近感が作られていくことを感じつつ、相手の話を聞いていきます。話を聞くことによって、相手が置かれている状況を理解し、相手の思いや気持ちを確認します。話を聞く際には、「オウム返し」「バックトラッキング」などの手法が有効です。

詳しい内容は、傾聴とは相手に意識を100%向けて理解しようとすることでも紹介しています。

ステップ4:問いかける

相手が置かれている状況を明確にし、相手が言葉にできていない、または、意識上にない情報を引き出すために、意識的に問いかけます。最もシンプルな問いのパターンが5W1Hです。

詳しい内容は、質問力―情報を共有し思考力を育むコミュニケーションスキル トライアングルコミュニケーションモデルでも紹介しています。

ステップ5:融合する

ここまでのステップを踏んでくると、相手の状況が理解でき、信頼関係(心と心が通じ合った状態)を作ることができます。このような状態になると、こちらの意見(つまり、伝えたいこと)を受け取ってもらいやすく(伝わりやすく)なります。

詳しい内容は、コミュニケーション能力における「共感力」の本当の意味でも紹介しています。

ステップ6:リードする

相手と信頼関係ができると、こちらに対する抵抗感がなくなり、意見を受け取ってもらいやすくなります。ここでいう「意見」とは、「アドバイス」「要求」「提案」「命令」「依頼」などです。

また、相手がネガティブな意識状態にあるとき、ポジティブな意識状態にリードする必要がある場合もあります。「こういうポジティブな見方もできませんか?」と提案することで、ネガティブな意識を学習や成長の機会に変えることもできます。これを専門用語では「リーディング」と呼んでいます。リーディングを行うためには、出来事に新しい意味をつける「リフレーミング」が有効です。

詳しい内容は、リフレーミング―大切な人を元気にする前向きな言葉の作り方で紹介しています。

ステップ7:気づきが生まれる

こちらの「アドバイス」「要求」「提案」「命令」「依頼」などによって、相手の中に気付きが生まれます。気付きとは、「あー、なるほど」というような「発見」です。発見があると、人は成長します。

詳しい内容は、「気づき」とは?―脳がひらめくコミュニケーションスキルで紹介しています。

ステップ8:行動する

相手を望ましい状態に変化させるためには、何かしらの行動が必要です。今すぐにでもできるような小さな行動を考えてもらったり、提案したりして、具体的な行動計画を立てます。

詳しい内容は、「行動する」 ― 問題解決のために必要なことで紹介しています。

ステップ9:望ましい姿に変化する

これまでのステップを踏むことによって、目の前にある課題が変化し始め、望ましい姿に変化しはじめます。

まとめ

コミュニケーションの基本と、構成要素について見てきました。ひと言で「コミュニケーション」と言っても、いろんな要素があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

観察や傾聴、質問など、それぞれのスキルの基本はとても簡単で、シンプルです。繰り返し練習すれば、身に付けるできます。一方、会話は単独で成り立っているわけではなく、さまざまな要素が複雑に絡んでいるので、習得するためには、「何を、どのように組み合わせていくのか」という会話の流れもも大切になってきます。

ここで示した

  1. 相手との間に信頼関係を作る
  2. 自分の意見を伝え、相手を望ましい姿にリードする

は、相手といい関係を作りつつ、こちらの意見を伝わるようにしていく基本的な要素です。まずは、自分の意見を言う前に、相手との関係づくりから始めるだけでも、コミュニケーションはやりやすくなるのではないかと思います。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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