「気付き」とは?―脳がひらめくコミュニケーションスキル
ビジネスの世界では、よく、「気付きが大切」と言います。
気付きは「あっ!そうか!」という感覚です。今まで当たり前だと思っていたことに変化をもたらすことができますし、これをビジネスに活かせば、新商品や新サービスなどを作り出すきっかけになります。
また、気付きは、さまざまな思い込みや制限を手放すきっかけにもなります。今まで八方塞だった問題の解決や個人の成長にもつながります。それはまるで、今までモヤがかかっていたところに光が差し込んできたかのような、急に視界が開けたような感覚です。
ところで、そもそも「気付き」とは一体どのような状態のことを指すのでしょうか?どのようにしたら「気付き」を起こすことができるのでしょうか?
「気付き」とは?
「気付き」とは、誰かから教えられたり、指示されたりすることなしに、自分の内面から生じる感覚的な「発見」や「ひらめき」、「解釈や理解の変化」のことです。
それは「AがBとなって、Cとなる」のように、論理的に考えて答えを導くというよりも、「ハッとする」「あっ!と思う」のように、突然起こるような感覚である場合が多いです。
たとえば、外出時に財布や携帯電話を忘れたときに起こる「あっ!○○忘れた!」という、あの感覚のように。
言い方を変えれば、「気付き」とは、それまで意識上になかったものが、何かの拍子に意識上に現れた状態とも言えるでしょう。
2つの「気付き」
「気付き」には、大きく分けると2つの種類があります。
突発的な気付き
1つ目は、何の前触れもなく突発的に起こる気付きです。忘れた財布や携帯電話をふと思い出したようなシーンがそうです。
きっかけによって起こる気付き
2つ目は、何かしらきっかけによって起こる気付きです。誰かが携帯電話を手にしているのを目にしたり、着信音を耳にしたり、知人から「携帯電話はどうしたの?」のように問いかけられたりするようなシーンがそうです。
「気付き」を起こすためには?
「突発的な気付きは」何の前触れもなく突発的に起こるので、何かしらの意識によってコントロールをすることは難しいのかもしれません。一方、「きっかけによって起こる気付き」は、何かしらのきっかけを意識的に作ることによって、気付きを起こすことができます。
気付きを意識的に起こすきっかけをいくつか上げてみました。
観察する
物事を細かく観察すると、何かしらの「変化」を見つけることができます。「変化」は気付きのきっかけになります。たとえば、小学校の自由研究でアリや草花の成長を観察したすると、「あれ?今までは○○だったのに変わったぞ!」と気づくように。
また、ルビンの壷がそうであるように、観察によって、静的なものの中からも気付きを起こすことができます。
「観察する」については、コミュニケーションの基本「観察力」の鍛え方も参考にしてください。
問いかける
問いかけは、今までの思考パターンにない「新しい思考パターン」を作るきっかけになります。「新しい思考パターン」は、新しい視点で考えることになり、新しい気付きが生まれやすくなります。
コミュニケーションスキルの1つであるコーチングは、この効果を狙っています。たとえば、何か新しいことをやろうとするとき、人はさまざまな恐れや不安を抱き、行動を無意識に止めてしまうことがありますが、そのような場合に……
- もし、お金も、時間も、年齢も、性別も、学歴も、すべてが自由になるとしたら、本当は何をしたいだろう?
- もし、友達が自分と同じ問題を抱えていたら、どんなアドバイスをするだろう?
- もし、90歳まで今の状態をずっと続けたとしたら、どんな結末を迎えるだろう?
のように、普段考えないような問いかけを、自分自身、または、周りの人から問いかけられることによって、気付きを起こすきっかけを作ることができます。
「問いかける」については、質問力―情報を共有し思考力を育むコミュニケーションスキルも参考にしてください。
異なる角度や視点で見る・聞く
ある物事を今までとは異なる角度や視点で見たり、聞いたりすると、新しい何かを感じ、気付きが起きるきっかけになります。
たとえば、優れたコンサルタントやコーチ、カウンセラーは、クライアントの「問題」を「機会」に変えるのが得意です。あるコンサルタントは、「仕事がない」と困っていたクライアントに、「成功者が一度はたどる道のりですね」と伝えました。また、あるコーチは、「売上が上がらず資金がショートしそう」と悩んでいた経営者に、「今までも似たような経験があったと思うけど、以前はどのように乗り越えたの?」「これは、一人で悩むのではなく、社員を巻き込んで、考えるチームを作る機会なんじゃない?これを乗り越えたら、すごい力になると思うよ」と伝えました。つまり、ネガティブな状況の中に、ポジティブな価値を見出して、伝えたのです。
このように、同じ物事でも、ポジティブな面に光を当てると、「あっ!そうか、これはチャンスなんだ」という気付きが生まれます。
「異なる角度や視点で見る・聞く」については、リフレーミング―大切な人を励ます前向きな言葉の作り方も参考にしてください。
「気付き」を妨げるもの
逆に、次のような環境は気付きを妨げてしまうでしょう。
理詰めで考えてしまう
気付きは「AがBとなって、Cとなる」のように、論理的に考えて答えを導くというよりも、「ハッとする」「あっ!と思う」のように、突然起こる感覚です。
一方、何かしらの問題を抱えているときは、発想がネガティブになり、頭が固くなりがちです。しかめっ面をして腕を組みながら、「う~ん、この場合はどのようにすべきなのだろう?」と理詰めで考えても、新たな気付きは起こりません。
気付きを起こすためには、理詰めで考えることから少し離れて、リラックスしているときに起こる「ふと浮かぶ感覚」が大切です。
「思い込み」が制限になっている
「○○すべき」「○○ねばならない」という思い込みは、視点をある1点にとどめてしまいます。異なる角度や視点で見ることができないため、気付きが起こりにくくなります。
気付きを起こすためには、突飛な意見でもOKとする頭のやわらかさが大切です。
「気付き」と脳科学
脳科学者の茂木健一郎氏によれば、脳科学には「アハ!体験(a-ha! experience)」という言葉があるそうです。
アハ!体験(a-ha! experience)とは ―
「わかったぞ」という体験を表す、英語圏で広く使われている言葉であるとともに、人類の脳の不思議な能力を表すキーワードとして、最先端の脳科学で注目されています。「ひらめき」や「創造性」とでも名づけられるような脳の驚くべきはたらきが、アハ!体験なのです。
筆者は脳科学の専門家ではないので詳しいことは分かりませんが、「アハ!体験」の感覚は分かります。筆者の意見では、「あっ!そうか!」という「気付き」は「アハ!体験」に近いものだと考えています。
「気付き」のメリット
気付きが起きたときのメリットをまとめてみました。
- 今まで当たり前だと思っていたことに新しい発想をもたらすことができる
- 見出せなかった答えが突然見つかり、八方塞だった問題の解決につながる
- ネガティブな出来事の中にもポジティブな意味があることに気付き、成長できる
まとめ
「気付き」についてまとめみました。いかがでしたか?気付きを起こすためには、観察、問いかけ、視点を変えるなど、さまざまなコミュニケーションスキルが役立ちます。
また、「あっ!そうか!」と発見したり、気づいたりしたときの、あの「脳がひらめく感覚」は、頭の中がネガティブな状態というよりも、どちらかというと、開放感、納得感、充実感のような、ポジティブな状態であることが多いです。
気付きを起こすためには、まずは、ポジティブでリラックスし、安心感がありながら、集中できる環境を作ることも大切なのかもしれませんね。
投稿者プロフィール
- 1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。
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