ティーチングとコーチングの違いとポイント
「ティーチングとコーチングは違う」と、聞いたことはありますか?
一言で言えば、ティーチングは相手に「教える」こと。コーチングは、相手から「引き出す」こと。情報の方向性としては、ティーチングは相手にインプットするイメージで、コーチングが相手からのアウトプットを引き出すイメージ。
ティーチングとコーチングの情報を知りたい方なら、ここまではご存知ではないでしょうか。
一方、ティーチングとコーチングは、「ティーチングよりコーチングのほうが大事だ」「経験が浅い人にはコーチングはむしろ害」のように、対立軸で扱われることも多いです。「で、どっちが大事なの?」と思われている方もいるでしょう。、
大切なのは、「どっちか?」なのでしょうか。さらによりよくする方法はないのでしょうか。
そこで、本記事では、ティーチングとコーチングの特徴や、具体的な例を示しながら、コミュニケーションにおける方法についてお話しします。
コーチングとティーチングの一般的な情報
まず、ティーチングとコーチングの一般的な情報をおさらいしましょう。
ティーチング
- こちらがもっている情報を「教える」「伝える」
- 知識を身につける初期段階に有効
- 相手のスタンスは「受け取る(受け身)」
- 得られる情報は与えられた情報の範囲
- 関係性が一方向。上下関係
ティーチングは、学校の先生と生徒の関係性を考えると分かりやすいですね。
コーチング
- 相手が持っている情報を「引き出す」。その方法は「問いかけ」
- ある程度の経験を持っている段階に有効
- 自分で考え、答えを導き出すように促す
- 自分で考えるために、気づきや発見、動機付けに効果的
- 関係性が双方向。対等な関係(どちらかといえば、相手が主)
コーチングとは何か?については、コーチングとは何か―不透明な時代の「自分で考える力」もご確認ください。
コーチングとティーチングの具体例
コーチングとティーチングを、具体的な例で比較してみましょう。
ここでは、会議資料のまとめ方が分からないという部下A君と、上司Bさんとのやり取りを想定しています。
ティーチング
A君:Bさん、次の会議で使う資料をまとめてみたんですけど、これでいいですか?
Bさん:ありがとう。う~ん、これでもいいけど、これだとプロジェクトの目的が何なのか、はっきりしないんじゃないかなぁ。最初のほうに、プロジェクトの目的を端的に表現してよ。
A君:分かりました。
コーチング
A君:Bさん、次の会議で使う資料をまとめてみたんですけど、これでいいですか?
Bさん:ありがとう。できたね。A君的には、何点の出来?
A君:80点ぐらいですかね
Bさん:じゃあ、あと20点上げるためには、何が必要なの?
A君:そうですね。後半が少しダラダラした感じなので、もう少し何とかできたらいいなとは、思います。
Bさん:何とか……って、例えば?
A君:例えば……箇条書きにするとか……でしょうか
Bさん:それはいいアイデアだね。じゃあ、そうしてみよう。後半が箇条書きになると、何点ぐらいになる?
A君:95点は行きますかね
Bさん:へ~、95点なんだ。あと5点は?
A君:もっとデザインをよくしたいんですけど、結構時間が掛かりそうです。
Bさん:そうだね。じゃあ、まず95点を目指してみよう
A君:分かりました
ティーチングとコーチングの違いの考察
ティーチングは、上司Bさんが部下A君に一方的に教えているのに対して、コーチングはBさんがA君に問いかけ、自分で考えるように促しています。「与える」か「考えてもらう」か。これが、ティーチングとコーチングの違いです。
一般的な情報の中には、「コーチングは部下に教えない」、中には、「教えてはいけない」のように、禁止口調で書かれている記事も多くあるようです。
たとえば、この例のティーチングでは、上司Bさんは「最初のほうに、プロジェクトの目的を端的に表現して欲しい」と、自分の意見を述べているのに対し、コーチングでは述べていません。この場合、Bさんは「本当は、もっと○○にしたほうがいいんだけど、コーチングは教えちゃいけないって言うしな」と、やや、ストレスを抱えてしまうかもしれません。
定義としては、ティーチングは「教える」、コーチングは「教えない」とされていますが、「どっちか」にしてしまうのはもったいないことだと筆者は考えています。たとえば、この例では、上司Bさんの経験に基づくアドバイスが加わったほうが、資料の品質はよりよくなることが想像できます。
ビジネスシーンで大切なことは、もっともベストな状態を作ることです。「コーチングでは○○してはいけない」のように、「どっちか」にしてしまうと、品質を上げる機会を奪ってしまいます。両方のいいところを合わせるようにすると、「一方的に言われる」「一方が我慢する」という感じではなくなり、双方のストレスも軽減できるでしょう。
たとえば、先ほどの例なら、Bさんのアドバイスを最後に加えて……
Bさん:そうだね。じゃあ、まず95点を目指してみよう。さらによくするとしたら、最初のほうに、プロジェクトの目的を端的に表現するといいと思うよ。そうすれば、プロジェクトの目的が最初に明確になるから。
A君:分かりました
Bさん:期待しているよ
のように、最後にプラスの情報としてアドバイスするといいでしょう。
まとめ
「ティーチングvsコーチング」のような、対立軸の関係にしてしまうと、どちらかがいい、どちらかが悪いというように、どちらかに偏りがちです。
大切なのは、スキルの正しさではなく、成果です。
「どっちか」ではなく、「どっちも」というスタンスで、ベストな状態を目指したいものですね。
投稿者プロフィール
- 1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。
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