価値観の違う同僚に改善点を伝えるコミュニケーション3つのポイント

Iさんが職場のコミュニケーションで困っていること

今回は、メールマガジンの読者、Iさんよりいただいたご質問についてお答えします。Iさんのメールには、次のようなことが書かれていました。

  • Iさんには同僚Aさんがいる。
  • AさんはIさんより年下で勤務歴少。一方、高学歴で職種的にはIさんより上位の仕事をしている。
  • Iさんから見て、Aさんの仕事ぶりに非効率な点があったので、IさんはAさんに指導した。しかし、指導した内容が勘違いされて伝わり、Aさんはトラブルを起こした。
  • トラブルの原因はIさんの説明不足もある。Aさんに説明が不十分だったことを謝罪したが、Aさんの怒りは収まらず、素直に聞き入れてもらえない。
  • Iさんは無駄を省き、効率よく仕事をして、空いた時間で別の業務をしたい。それが、職場全体の効率化につながり、全員の残業が減ればといつも考えているものの、Aさんに上手く伝えることができずに困っている。
  • 価値観や意見の違う相手に改善してほしいとうまく伝えるにはどうしたらいいか教えてほしい。

期末ということもあり、職場もピリピリ。胃が痛くなる状況なのだそうです。胃が痛くなるほど……とは大変ですね。

私にも似たような経験があるので、そのお気持ち、とてもよく分かります。

関係をよくするコミュニケーション3つのポイント

Iさんのメールを拝見して、価値観や意見の違う相手に改善点を上手く伝える方法が3つ思い浮かびました。その3つとは……

  1. 足し算指導法を使う
  2. 一人称、二人称で話す
  3. 相手のハッピーを考える

です。

ポイント1:足し算指導法を使う

同僚の問題点を指導する際、多くの場合、まず、問題点を指摘し、それを改善するよう伝えます。

たとえば、非効率な仕事の仕方をしているAさんに、無駄を省き、もっと効率よく仕事をしてほしいなら、こんな感じで伝えるでしょう。

「Aさん、その方法は無駄が多いし、非効率だよ。もっと○○にしたほうがいいよ」

しかし、問題点を直接指摘されると、ネガティブな気持ちを抱かせます。特に、相手としては一生懸命やっている場合、「それは無駄だ」と言われると、自分の仕事や人格を否定されているように感じます

このようなシーンでは、問題点を指摘するよりも、「こうすれば(現状よりも)もっと良くなる」という伝え方に変えると、相手に嫌な思いをさせません。

たとえば・・・

「Aさん、いつも一生懸命仕事をしてくれてありがとう。△△のやり方を、○○に変えると、もっと良くなると思うよ。これからも期待しているね」

のようにです。「問題点を指摘する」のではなく、「現状に何かを加えてもっと良くする」ので、私はこれを足し算指導法と呼んでいます。

ポイント2:一人称、二人称で話す

Iさんから頂いたメッセージを拝読して、Iさんはどちらかというと

  • 「職場が」
  • 「みんなが」
  • 「会社が」

のような、三人称を使うことが多いタイプのように感じました(違っていたらすみません)。

たとえば・・・

「無駄を省き、効率よく仕事をして、空いた時間で別の業務をしたい。それが、職場全体の効率化につながり、全員の残業が減ればといつも考えている」

では

  • 「職場全体の」
  • 「全員の」

のような、三人称の言葉が多いことに気づきます。

筆者が、メッセージを伝える際に、とても大事だと思うのは、一人称や二人称でメッセージを伝えることです。つまり……

  • 「私が」どう思っているのか、どうしたいのか。
  • それを実現することで、「あなたが」どうなれるのか

のようにです。

「職場全員の残業が減って欲しい」よりも、「あなたの残業が減って欲しい」のほうが、メッセージとしては「あっ、私のことを思ってくれているんだな」というように伝わるのではないでしょうか。

ちなみに、地域のため、国家のため、社会のため、世界のため、人類のため、宇宙のため……のように、対象を大きくすればするほど、自分から離れていく感じがします。その結果、メッセージとしてはあまり響きません。

ポイント3:相手のハッピーを考える

ポイント2にも通じるのですが、「それをすることで、相手がどうハッピーになるのか」を考えることも、とても大切だと思います。

効率化することで、確かに、「職場のため」「会社のため」になるでしょう。

けれども、同僚の、内面からの動機づけを起こすためには、「職場が」でもなく、「会社が」でもなく、「私がどうなれるのか」を理解したときです。

  • 無駄を省くことで、同僚はどうハッピーになれるのか?
  • 効率よく仕事をすることで、同僚はどうハッピーになれるのか?
  • 空いた時間ができることで、同僚はどうハッピーになれるのか?
  • 残業が減ることで、同僚はどうハッピーになれるのか?
  • 早く帰ることができることで、同僚はどうハッピーになれるのか?

同僚がハッピーになっている姿を、具体的に想像し、イメージしてみてください。

たとえば、同僚が効率よく仕事ができることで、自由な時間ができます。その結果、こころの余裕もできて、新しいスキルを身に着ける機会を得られているのかもしれません。家族や彼氏・彼女と食事をする時間ができ、「お父さん、今日ば僕たちのためにありがとう」と子供から言われているのかもしれませんし、「今日はステキな時間をありがとう」と彼氏・彼女から言われているのかもしれません。

「私」へのメッセージがこころを動かす

無駄を省き、効率よく仕事をすることも大切でしょう。けれども、効率だけを求められると、意外と苦しいものです。だからこそ、効率化することで、「同僚がどうハッピーになれるのか」を考えてみてください。

「職場」や「会社」のことよりも、「私」のことを思ってくれているのだと分かれば、価値観や意見が違う同僚のこころも動かすことができるのではないでしょうか?参考になりましたら幸いです。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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