働き方改革はルールやツールに加えてコミュニケーションも改革すべき

働き方改革が世間の注目を集めています。「残業時間削減」や「副業」、「リモートワーク」など、国レベルでも議論され、多くの企業が新たな制度作りやツールの導入を始めています。

一方、最近はやや「流行語」になっている点も否めません。

もちろん、ルールやツールも大切ですが、最も大切なのは、働き方改革の「本質」です。ここでいう「本質」とは、職場における「人と人との営み」……つまり、コミュニケーションです。

そこで、この記事では、働き方改革と職場のコミュニケーションについて見ていきます。

ルールやツールを導入しても機能していない実態

私の意見では、働き方改革はルールやツールに加えてコミュニケーションも改革すべきだと考えています。なぜなら、新しいルールやツールを取り入れても、それを運用するヒトに変化がなければ、職場で起こっているさまざまな問題は解決しないからです。

たとえば、育児休暇の制度は多くの会社が導入しています。厚生労働省が発表した「平成 27 年度雇用均等基本調査」の結果概要によれば、育児休暇制度がある企業の割合は、5人以上の事業所で 73.1%(平成 26 年度 74.7%)、事業所規模 30 人以上では 91.9%(同 94.7%)となっています。

この中で、平成 25 年 10 月1日から平成 26 年9月 30 日までの1年間の在職中に出産した女性のうち、平成 27 年 10 月1日までに育児休業を開始した人の割合は 81.5%となっています。一方、同期間で配偶者が出産した男性のうち、育児休業を開始した者の割合は 2.65%となっています。

出典:「平成 27 年度雇用均等基本調査」の結果概要 | 厚生労働省

これは、ルールは整っているものの、うまく機能していない一例です。

働き方改革では職場のコミュニケーションも改革すべき

とはいえ、男性の育児休暇取得率は少ないものの、少しずつ増えているのは間違いありません。その理由は「文化が醸成してきた」からと言えるでしょう。

では、文化はどのように醸成されるのでしょうか。一言でいえば、人と人との営み……つまり、コミュニケーションの中で生まれていくのだと思います。社内の文化を変えるのは容易なことではないかもしれませんが、その始まりは、一対一の人間関係にあるように思います。

今まで、ビジネスシーンと言えば、「仕事は仕事」「プライベートはプライベート」「プライベートよりも仕事優先」のような価値観が一般的でした。そのため職場では、育児や介護などプライベートのことを相談しにくいのが実態でした。

けれども、もし、仕事・プライベートに関わらず、気軽に話せる環境や信頼関係があれば、困っている社員の実態を把握することができ、本当に使いやすい制度設計をするきっかけになります。特に、働き方改革は、「仕事だけ」のことを考えればいいのではなく、仕事とプライベート、いや、社員の人生を扱っていると言っても過言ではありません。

また、職場における信頼関係があれば、仮に、ルールやツールがなくても(もちろん、便利なルールやツールはあったほうが断然よいですが……)、臨機応変な対応ができるかもしれませんし、悩みを理解してもらえるだけで、気持ち的にずいぶん楽になるかもしれません。

職場の信頼関係を作るためには

職場の信頼関係を作るためには、大きく分けると2つの方法があります。

一つは、「社員と一対一で話す機会を定期的に設けること」です。

「一対一で話す」というと、面談的なものをイメージするかもしれません。面談は上司と部下が行うもので、そこには、上下関係や評価のニュアンスが含まれるため、抱えている課題や本音を気軽に話すことができません。ざっくばらんに話せるよう、よりフランクな、雑談的なものにするといいでしょう。

例えば、私が管理職時代、毎月必ず30分以上、部下と雑談する時間を設けていました。たわいもない話をする中で、仕事の悩みごとやプライベートの話を聞くことができ、部下と信頼関係を築くことができました。

一つは、「管理職層のコミュニケーション能力を高めること」です。

どんなに話す時間を作っても、怒られたり、評価されたりするばかりでは話す気にはなれません。管理職層には一定のコミュニケーション能力が必要です。

例えば、信頼関係の基本は相手に「合わせる」ことです。自分の意見は脇に置いておいて、部下の話を傾聴すれば、「〇〇さんなら、私のことを分かってくれる」と思ってもらえるでしょう。また、物事を批判的に伝えるよりも、前向きに伝えたほうが、余計な反感を買わずに理解を得やすいと思います。

ルールやツールを上手く機能させるためには、このような信頼関係も大切なのです。

まとめ

働き方改革を上手く進めるための、職場のコミュニケーションについて見てきました。

「働き方改革」というと、「残業時間をゼロにする」「育児休暇の取得率を〇%にする」など、一般的には制度設計のほうに目が行くと思います。また、「どこでも働ける最新のIT技術」など、ツールの導入のほうに目が行くかもしれません。

けれども、(繰り返しになりますが……)それらを運用するのは、使うのはヒトです。優れたルールやツールは、優れた信頼関係があってこそ。

働き方改革に合わせて、コミュニケーション改革も併せて行っていきたいものです。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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