職場のコミュニケーションを活性化する朝礼のやり方

多くの職場では、朝礼を行っているでしょう。

朝礼は一日の始まり。せっかくなら、職場の空気を明るくし、元気に仕事を始めたいものですよね。

一方、一般的な朝礼は、どちらかというと重い雰囲気で、やらされ感が強いイベントです。退屈に思っている社員も、中にはいるかもしれません。

ここに紹介する朝礼は、筆者がIT業界で管理職だった時代に職場で実際に行い、非常に効果があった方法です。次のような効果がありました。

  1. 社員のプレゼンテーション力が伸びる
  2. 社員の傾聴力が伸びる
  3. 物事の捉え方が柔軟になり、前向きな思考習慣が出来る
  4. 前向きな言葉を掛け合うことで、職場が安心・安全な雰囲気になる

その結果、明るく安全で、言いたいことが自然と言い合える、コミュニケーションが活発な職場にすることができました。また、顧客からも、「話をていねいに聞いてくれるからうれしい」などの声が聞かれ、社員からも、「ユーザーの話をていねいに聴くことで、仕事のミスが少なくなった」などの報告がありました。

それでは、職場のコミュニケーションを活性化する朝礼のやり方をご紹介しましょう。

一般的な朝礼がつまらない理由

まず、一般的な朝礼がつまらない理由について考えてみましょう。多くの会社で行われている朝礼は、次のような流れではないでしょうか。

  1. 職場長から朝の挨拶
  2. 社訓や社歌の唱和
  3. 連絡事項の伝達
  4. 質問がないか確認
  5. 解散

このほか、スピーチを行っている職場もあるかもしれません。

これらの要素を改めて眺めてみると、一般的な朝礼は「一方通行」です。話しているのは職場長やスピーチをする人だけ。その結果、社員は「受身の姿勢」で、「やらされ感」が蔓延してしまいます。

職場の雰囲気を明るくする朝礼

朝礼の雰囲気を明るくするためには、「双方向(インタラクティブ)性」が必要です。つまり、「受身の姿勢」から、皆が参加できるようにするのです。

挨拶や連絡事項は、基本、一方通行なので、あまり変えようがありません。そこで、双方向性のあるスピーチをご紹介します。

ざっくりとした流れは……

  1. スピーカーが3分間話をする
  2. 聴衆は聞いた内容を要約してスピーカーにフィードバックする
  3. 2を数人繰り返す

このようにすることで会話のキャッチボールが生まれ、お互いの気持ちを分かり合うとともに、スピーカーは話す練習、話を聞く側は傾聴の練習になります。また、スピーチの内容がきっかけで、朝礼の後、社員間でもちょっとした会話が生まれます。「そういえば今朝の朝礼の話だけど、実はさ、ボクもそう思っていたんだよ」のように。

職場のコミュニケーションを活性化する朝礼のやり方

では、職場のコミュニケーションを活性化する朝礼の具体的な手順をご紹介しましょう。

挨拶や連絡事項など、一般的な朝礼をやった後で実施します。用意するものは、小さめのやわらかいボールです(ボールは後ほど説明します)。

グループで輪になる

15名以下ぐらいの人数で輪になります。

スピーカーが3分間スピーチをする

社員が毎日交代で、3分以内でスピーチをします。話すテーマは、仕事やプライベートの話など、自由です。たとえば、仕事が上手くいったことやおいしかったレストランなどポジティブな話や、プレゼンで失敗したことや顧客から叱られたことなどネガティブな話でもかまいません。

スピーチは時間を計測し、短すぎたり、時間を越えたりしないようにします。タイムキーパーをおくか、スピーカー自身が時間を計測してもいいでしょう。時間を決めることで、決められた時間の中で言いたいことを分かりやすく話すトレーニングになります。

拍手をする

3分間スピーチが終わったら、聴衆はスピーカーに対して拍手をします。

スピーカーはフォードバックする人を指名する

スピーカーは、聴衆の中から、「○○さん」と言いながらフィードバックする人を指名し、やわらかいボールを投げます。クッシュボールというゴム状のボールが便利です。ほかのボールでももちろんかまいません。

聴衆は聞いた内容をスピーカーに要約して確認する

指名された人は、「○○さん(スピーカーの名前)は□□したのですね」「○○さんは□□と感じたのですね」のように、スピーカーは何を言いたかったのか、どんな経験をしたのかを要約して確認します。

「私は○○だと思った」のような聴衆の感想や、「○○の場合は□□にしたほうがいいと思う」のような批評やアドバイスは必要ありません。スピーカーが言いたかったことを一言で要約し、確認するようなニュアンスです。詳しくは話を聞く効果を最大化する2つの傾聴技法と6つのポイントも参考にしてください。

このようにフィードバックすることで、傾聴する能力が身につきます。

スピーカーの話がネガティブな場合は、ポジティブに言い換えて伝えるようにします。たとえば、「昨日、顧客にプレゼンをしたら、上手く伝えることができずくやしい思いをした」という内容なら、「くやしいと感じるのは、それだけ、一生懸命に取り組もうとしていたんですね」「失敗したからこそ、次回のプレゼンがよりよくしたいとお思いなんでしょうね」のように。ポジティブな意味づけをしてフィードバックすることで、スピーカーは、ネガティブな体験にもポジティブな意味があることに気づき、前向きになれるとともに、フィードバックする人には、相手をねぎらいながら、物事を前向きに捉える思考習慣が身につきます。詳しくはリフレーミング―大切な人を励ます言葉の作り方も参考にしてください。

次の人にバトンタッチする

一人のフィードバックが終わったら、次の人のフィードバックする人を指名します。これを、3人ほど繰り返します。誰が指名されるのか分からないため、程よい緊張感が生まれ、全員が相手の話をよく聞くようになります。

まとめ

この方法は、コミュニケーション心理学をベースに考えた方法で、「スピーチ」「傾聴」「肯定的な物事の捉え方」の3つの要素が入っています。朝礼で毎日行うことで、社員の「伝える力」と「傾聴力」が身につくとともに、前向きなフィードバックは、前向きで柔軟な思考習慣と、安全で働きやすい職場の雰囲気を作ることができるでしょう。

あなたの職場でも、ぜひやってみてください。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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