メンタリングとコーチングの4つ共通点と違いとは

「自発的・自立的な人材を育てる」方法として、メンタリングやコーチングが注目を集めています。新入社員や若手社員を育てるために「メンター制度」を導入する企業もあります。

メンタリングもコーチングも、広義では、人材の育成、指導方法の一つです。支援者が対象者と信頼関係を構築し、指示や命令によらず、対話による気づきと助言によって自発的・自立的な成長を促します。

では、メンタリングコーチングは何が違うのでしょうか。それぞれの起源と共通点、違いについて見ていきます。

メンタリングとコーチングの起源

まず、メンタリングとコーチング起源について見てみましょう。

メンタリングの起源

「メンタリング」という言葉の起源は、ギリシャの詩人ホメロスの書いた叙事詩「オデュッセイア」に登場する「メントル(Mentor)」から来ています。メントルはオデュッセイアに登場する王の息子の指導者、助言者、支援者の役割を果たした老賢者です。その後、メントルは英語でメンターと呼ばれるようになり、対象者を支援することをメンタリングと呼ぶようになりました。

メンタリングでは、支援を受ける対象者のことを「メンティ」と呼びます。

コーチングの起源

「コーチング」という言葉の起源は、英語のコーチ(coach)から来ています。コーチには「馬車」という意味があり、「人を目的地まで送り届ける」という目的があります。そこで、「対象者の目標やゴールに向けて支援すること」をコーチングと呼ぶようになりました。

コーチングでは、支援を受ける対象者のことを「クライアント」と呼びます。

メンタリングとコーチングの共通点

メンタリングとコーチングには、次のような共通点があります。

1対1の人材育成方法

メンタリングとコーチングは、基本的に1対1の人材育成方法です。メンターやコーチは、メンティやクライアントの成長や目標の達成のために、仕事や人生におけるこれまでの経験や、さまざまなスキルを駆使し、1対1で真剣に取り組みます。

主体はメンティやクライアント

メンタリングとコーチングの主体はメンターやコーチではありません。人生をよりよくしたい、目標と達成したいと願うメンティやクライアント自身にあります。

対象者の自発的、自立的な成長を促す方法

メンタリングとコーチングの主体は対象者であることから、その関わり方は対象者の自発性や自立性の成長を促す方法が用いられます。

対話による気づきを中心とした方法

メンタリングやコーチングでは、対象者の自発性や成長を促すことから、指示や命令ではなく、次のようなコミュニケーション方法を用います。

メンタリングとコーチングの違い

メンタリングとコーチングには、次のような違いがあります。

テーマの違い

メンタリングのテーマは、仕事や人生など、その範囲は広く長期的です。一方、コーチングのテーマは、業務目標の実現やプロジェクトの達成など、その範囲はメンタリングに比べると限られ短期的です。

関わる範囲の違い

メンタリングもコーチングも、対話により気づきや自発的な行動を促すようなコミュニケーションの方法を用います。

メンタリングはこれに加えて、経験の浅いメンティに助言や指導をしたり、自身がロールモデルになったりと、コーチングに比べると広い範囲を支援します。

また、コーチングは主に、目標実現に向けた行動(何をするか)を支援するのに対し、メンタリングはこれに加えて、悩みの相談や心の整理など、メンタル的な支援もします。

being、doing、havingの違いと全てを引き出すコーチング術では、being(あり方や存在)、doing(行いや行動)、having(持ち物や所有)の違いと関連性について解説しています。「メンタリングはbeingを支援し、コーチングはdoingを支援する」と見ると、その違いや関連を理解しやすいと思います。

対象者の違い

メンタリングは仕事や人生全般を扱うことから、メンティは新入社員など若手の後輩、起業を目指している起業家など、その道の経験が浅い人も支援します。

一方、コーチングは業務目標の実現やプロジェクトの達成を扱うことから、メンタリングに比べると業務経験がある人を支援します。

メンターとコーチに求められることの違い

前述の通り、コーチングはメンタリングに比べると扱う範囲が狭いことから、対象者が目指している分野の専門知識や業務経験、成功体験がなくても行うことができます。

一方、メンタリングは経験が浅い人に助言、指導したり、ロールモデルとなったり、メンタル面も支援することから、対象者が目指している分野の専門知識や業務経験、成功体験が求められます。また、メンタル面も扱うことから、失敗体験やカウンセリングなどのコミュニケーション能力があると心強いです。

まとめ

メンタリングとコーチングの起源と共通点、違いについて見てきました。メンタリングとコーチングの違いを一言でまとめると、「関わる範囲の違い」と言えます。

ここまでの話をお読みになって、「コーチングよりメンタリングのほうが優れているのではないか」あるいは、「コーチよりメンターより優れているのではないか」とお感じの方もいるかもしれませんが。「厳密に分ける必要はない」というのが筆者の考えです。優れたコーチほど、メンタリングの範囲も扱っています。

しごとのみらいでもコーチングを行っていますが、クライアントが目指している目標やゴールに対する業務経験があった方が断然いいですし、ビジネスシーンでは悩みを抱えることも多いので、メンタル面を支援することも多いです。

大切なのは、メンティやクライアントが目指す目標やゴールを自発的な行動で達成できるよう、必要な支援を行っていくことです。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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