ロジカルシンキングとは―論理的思考能力を成長の力に変えよう
ロジカルシンキングは、「論理的思考」として知られています。
論理的に考えることによって、複雑な物事を分かりやすく整理し、理解することができます。また、論理的に話すことができれば、意見や考えをまわりの人に分かりやすく伝えることができるため、ビジネスパーソンの必須スキルとして知られるようになりました。
人材育成の研修でも、ロジカルシンキングは人気の講座です。
では、ロジカルシンキングとは、どのような内容で、どのようにすれば身に付き、どのようなメリットがあるのでしょうか。
そこで、本記事では、ロジカルシンキングとは何かについて触れ、身に付けることで磨かれる能力、日常で簡単に身に付けられる方法についてみていきます。
ロジカルシンキングはとても簡単です。そして、誰でも身に付けることができます。
ロジカルシンキングとは?
ところで、ロジカルシンキングには、どのような意味があるのでしょうか?
日本の人事部によれば……
「ロジカル・シンキング」とは、論理的思考という意味。情報を決められた枠組みにしたがって整理・分析するさまざまなスキルの集まりを指し、これらを使うことによって、複雑なものごとの因果関係を明快に把握したり、問題に対する有効な解決策を導き出したりすることが可能になります。合理的な判断や論理的な説明の前提となる思考法で、意思決定や交渉、プレゼンテーションの際に活用できることから、人材育成の現場では必須のコンピテンシーとして定着しています。
出典;ロジカル・シンキング | 日本の人事部
簡単にまとめると、二つの構成要素があります。
- ある枠組みで整理・分析する
- ある枠組みでつなげる
これらを身に付けることによって、複雑なように見えることを分かりやすく整理し、相手が納得できるよう分かりやすく伝える能力が身に付きます。
例えば、ある物事に対して「メリットとデメリット」に分けて考えることがよくありますが、これだけでも立派なロジカルシンキングです。
ロジカルシンキングで身に付く能力
ロジカルシンキングの二つの構成要素
- ある枠組みで整理・分析する
- ある枠組みでつなげる
ができると、次のような能力が身に付きます
思考能力
「ある枠組みで整理・分析する」ことによって、思考能力が身に付きます。具体的には、整理する能力、分析する能力、発見する能力、問題を解決する能力です。
分かりやすくするために、カードが不足しているトランプから、どのカードが足りないかを見つけることを例に、それぞれの能力について見てみましょう。
整理する能力
ロジカルシンキングが身に付くと、複雑な物事をまとめることによって、現在の状態を分かりやすくする整理する能力が身に付きます。
バラバラに並んだトランプから、不足しているトランプ1枚を探すのは難儀ですが、同じ数同士、または、同じ種類同士でまとめれば目星がつけやすくなりますよね。
分析する能力
ロジカルシンキングが身に付くと、分析する能力が身に付きます。
トランプには、1~13まで、ハード、クラブ、スペード、ダイヤの4種類のカードがあります。このルールを知っていれば、同じ数同士、または、同じ種類同士をまとめたあとに、「枚数を数えれば、どのカードが不足しているかが分かるはずだ」のように分析できます。
発見する能力
ロジカルシンキングが身に付くと、整理・分析した結果、モレたり、ダブったりしているものが分かるため、過不足しているものを発見する能力が身に付きます。
分析したことを実際にやってみれば、不足しているトランプはすぐに見つかりますよね。
問題を解決する能力
ロジカルシンキングが身に付くと、問題を解決する能力が身に付きます。
不足しているトランプのカードをそろえるなら、「どうしたら、この問題を解決できるか」を目的と状況に照らし合わせて、「最後に使った日のことを思い出して探す」「取りあえず、代用カードを作る」「新しいトランプを買う」などと考えることで、再び使えるようになるでしょう。
ストーリーを組み立てる能力
「ある枠組みでつなげる」ことによって、ストーリーを組み立てる能力が身に付きます。「ストーリーを組み立てる能力」とは、「Aによって(原因)、Bになる(結果)」のように、独立したそれぞれの事柄に因果関係を論理的に結び付けていく能力です。
「ストーリーを組み立てる能力」は、ビジネスシーンでは次のような能力として役立ちます。
書く能力
ロジカルシンキングが身に付くと、文章で分かりやすく伝える能力が身に付きます。なぜなら、自分の考えをシンプルに、論理的に文字で表現できるようになるので、文章ががぜん分かりやすくなるからです。
例えば、ビジネスシーンではメール、報告書、プレゼン資料など、文章で伝える場面がたくさんありますよね。「私の言いたいことは○○です。なぜなら、私は□□のように考えているからです。」のように、文章を分かりやすく書き、伝える能力は、大きな強みになるでしょう。
話す能力
ロジカルシンキングが身に付くと、言葉で分かりやすく伝える能力、説明する能力、提案する能力、プレゼンテーション能力が身に付きます。その理由は、自分の考えをシンプルに、因果関係を論理的に結び付けて話せるようになるからです。
例えば、プレゼンのシーンで、「今日のテーマは○○についてお話します。私の意見では、○○について大切なのは□□です。なぜなら、私の経験では△△だからです。具体的に説明するために、大切なポイント三つについてお話しましょう。一つ目のポイントは……」のように「結論→その理由→それを裏付ける具体例」のように話すと、結論が端的で、因果関係がはっきりするため分かりやすいプレゼンになります。
未来を組み立てる能力
ロジカルシンキングが身に付くと、未来を創造し、実現する能力が身に付きます。なぜなら、未来とは、「こうしたら、こうなるよね。その結果、こうなっていくよね」のように、「現在」と「未来」を因果関係でつなぎ合わせて、オリジナルのストーリーを作っていくことだからです。
例えば、お客さまに事業のプランを提案するときに、「このプランを実現すると売り上げが上がります」では説得力がありませんが、「このプランを実現すると、○○になります。すると、○○になって、○○になるから売上が上がるんです。ということは、それだけお客さまから喜ばれるということです。そうしたら、社員みんながうれしい。そんな事業プランを一緒に実現しませんか?」の方が、未来を思い描けるのでワクワクします。動機づけにもなります。
未来を想像できるストーリー、それをイメージできたときのワクワク感が、未来を創っていくのです。
ロジカルシンキングの鍛え方
ロジカルシンキングの二つの構成要素
- ある枠組みで整理・分析する
- ある枠組みでつなげる
をさらによく見てみてみると、これらには「枠組み」という共通点があることが分かります。ロジカルシンキングは、ある枠組みを使って、整理・分析したり、つなげたりすることです。
つまり、その枠組みを知っているか否か。ロジカルシンキングに必要なのは基本的にこれだけです。あとは、枠組みにそって整理・分析したり、つなげたりすればいいだけ。多少のトレーニングを積めば、誰でも身に付けることができます。
例えば、トランプの枠組みは、「1~13まで、ハード、クラブ、スペード、ダイヤの4種類のカードがある」です。この枠組みを知っているから、不足しているカードを効率よく探すことができるわけです。
ロジカルシンキングというと、横文字で、なんとなく難しい感じがするかもしれません。また、一般的に紹介されるのが、「ロジックツリー」や「MECE」「SWOT分析」など、専門用語が出てくることが多いので、それだけでハードルが高く感じます。
しかし、ビジネスシーンでは「メリット・デメリット」「損・得」「強み・弱み」「人・もの・金・情報」など、ある枠組みに従って考えることがよくあるように、私たちは普段から、このような枠組みに当てはめて整理・分類しながら考えています。これ自体がロジカルシンキングなのです。
ですから、あまり難しく考えず「便利な道具」くらいにシンプルに考えましょう。
ロジカルシンキングの便利な道具
ロジカルシンキングをやりやすくする便利な道具をご紹介しましょう。
一般的に、ロジカルシンキングといえば「ロジックツリー(論理を構成する関連図)」や「MECE(モレなくダブリなく)」「SWOT(強み・弱み・機会・脅威)分析」など、さまざまなツールがあります。一方、毎日「よし、MECEで考えよう」「SWOT分析しよう」のように使うことはあまりありません。
ここでは。仕事で考えたり、文章を書いたり伝えたりするときに、サクッと使えるシンプルな分かりやすい方法を紹介します。
整理・分析するツール
箇条書きにする
日ごろ、言いたいことを長い文章で書く習慣があるなら、箇条書きにするだけでもロジカルシンキングに役立ちます。なぜなら、箇条書きにするためには、言いたいことを短くまとめる必要があるからです。
例えば、今、ほしいものを頭の中でぼんやりと考えているよりも、
- 洋服
- 車
- 現金
- くつ
- バイク
- パソコン
紙に箇条書きでリストアップしてみた方が、頭の中がスッキリできます。
まとめる
続いて、同じカテゴリーでまとめてみましょう。
洋服やくつ、車やバイクなどは、衣料品や趣味などは同じカテゴリーでまとめられます。このようにまとめてみると、「他のまとまりはないかな?」のように、他のカテゴリーを考えるきっかけにもなりますよね。
具体的にする
さらに、イメージを具体的にしてみましょう。
洋服なら、どんな洋服なのか?いつまでに欲しいのか?どこで買う予定か?どのようなシーンで使うのか?どのぐらいの価格か?など、いろんな視点で具体的にするといいでしょう。5W1H(いつ、どこで、誰が、なにを、なぜ、どのように)の視点で考えてみるといいでしょう。
5W1Hはとてもシンプルですが、モレなくダブリなく考える上で、とても便利な枠組みです。文章を具体的に書く上でも便利です。
また、「まとめる」「具体的にする」を紙に書き出すのもいい方法です。紙に書き出すだけでロジックツリーのできあがり。紙に書きながら考える方法については、次の記事も参考にしてください。
つなげるツール
つなげるツールは、自分の考えを分かりやすく伝えたり、ストーリーを組み立てたりするときに便利です。
結論から話す
自分の考えを周りの人に伝える際、「私が言いたいことは○○です」のように、結論から伝えることを意識するだけで、かなり論理的な脳に近づけることができます。なぜなら、最初に、「私が言いたいことは、つまり……」「私が言いたいことをひと言でいうと……」と言いたいことを考えるので、それだけで頭の中を分かりやすく整理できるからです。
例えば、「私が今欲しいものは、ひと言でいうと何だろう?」と考えてみる。すると、いろいろ浮かびながらも、その中で優先順位を付け、その中でも、「うん、これだな」と決めるでしょう。
また、周りの人に意見を伝えるときも、結論から端的に伝えた方が、経緯を順番に「○○があって、それで、○○になって、それから……」のように伝えられるよりも、言いたいことひと言で伝わります。
「なたもだ」で話す
結論の後に、「なぜなら(その理由)」を付け加えると話が論理的になります。
例えば、「実は、今、新しいパソコンが欲しいんです(結論)。なぜなら、今のパソコン、最近遅く感じてしまって、仕事中にイライラすることがあるからなんです(理由)」のようにすると、話が論理的になり、理由がはっきりするので相手に伝わりやすくなります。
ロジカルシンキングを意識して、話のストーリーをつなげる枠組みに、「なたもだ」や「PREP法」があります。非常にシンプルながら、話のストーリーは分かりやすく組み立てることができます。詳しくは。簡単!わかりやすく伝える論理的な話し方2つも併せてご覧ください。
「で?」「すると?」でつなげる
もう一つロジカルシンキングでいい方法として、「で?」や「すると?」で思考をつなげていくと、未来を組み立てやすくなり、便利です。
例えば、お客さまに提案する事業プランを考えるなら、「このプランが実現したら……すると、どうなる?」のようにつなげて考えます。その答えが「今より仕事の効率が上がる」ならば、「で、どうなる?」のように、さらにつなげて考えてみます。
このように、「で?」「すると?」とつなげて考えると、自然と、「その先」「その先」を考えることになります。さらに詳しくは、「抽象的思考能力」で問題解決力を高めようも併せてご覧ください。
この図は、しごとのみらいの事業プランです。矢印の関連が、「で?」「すると?」でつながっているのがお分かりいただけるでしょうか。
成長するためにさらに意識すべきことは?
インターネット上のロジカルシンキングの記事を探してみると、「ロジカルシンキングは万能ではない」のような記事をよく目にします。確かに、ロジカルシンキングができれば全て万能……ということではないのかもしれません。
その理由は簡単です。ロジカルシンキングは、脳の半分の機能しか使っていないからです。
一般的に、左脳は思考や論理的な処理が得意とされ、右脳は知覚や感性の処理が得意といわれています。ロジカルシンキングは左脳的な情報処理です。
それに加えて私たちは、「感情」「感覚」「イメージ」「直観」「ひらめき」のような、右脳的な情報処理もしています。これが、「万能ではない」といわれるゆえんです。
私たちが成長していくためには、論理的・分析的なロジカルシンキングに加えて、まわりの仕事仲間やお客さまの悩みに寄り添うこと、気持ちを分かち合える感性など、感情や感性も大切です。ですから、ロジカルシンキングに加えて、感性も磨いていきたいと思うのです。
まとめ
ロジカルシンキングとは何かについて、日常生活でできるだけ簡単に身に付ける方法についてみてきました。
ロジカルシンキングは、複雑な物事を整理・分析し、分かりやすく伝える上でとても便利なツールです。直感やひらめきとは異なり、誰でも身に付けることができます。
また、日ごろの仕事の中で考えたり、文章を書いたり、意見を伝えたりするときにすぐに試すことができます。また、仕事に限らず、ブログを書いたり、SNSに投稿したりするときにちょっと意識してみると、いいトレーニングになります。
毎日のちょっとした意識と実践が、成長の力になります。そうすれば、周りから信頼されるビジネスパーソンになれるでしょう。
投稿者プロフィール
- 1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。
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