どこがマズイの?なぜなぜ分析の注意点と3つのポイント

なぜなぜ分析とは?

なぜなぜ分析は、ある現象や問題の原因を出すための手法として知られています。特に生産現場の問題解決手法として使われることが多いですね。「なぜ?」という問いを繰り返すことによって、「真の原因」を探るという方法です。

たとえば、パソコンの組み立てラインで、本来締められていなければならないねじが、設備の故障で締められていなかったという問題が発生したとします。

なぜなぜ分析を使って原因分析をすると

  • 「なぜねじが締められていなかったのか」 → 「設備のねじが欠品していた」
  • 「なぜ欠品しているのに設備が止まらなかったのか」 → 「センサーが壊れていた」
  • 「なぜセンサーが壊れたのか」 → 「経時劣化のため」
  • 「なぜ経時劣化が起こったことに気づかなかったのか」 → 「点検リストに入っていなかった」
  • 「なぜ点検リストに入っていなかったのか」 → 「ダブルチェックの仕組みがなかった」

のようになるでしょう。

なぜなぜ分析は、問題の原因を深堀することによって「真の原因」が分かり、問題の根本的な解決につながるという考え方です。

なぜなぜ分析の注意点

問題の原因を追究することはとても大切ですが、なぜなぜ分析は気をつけて使わないと、問題を何も解決しないまま、解決したような気になってしまうという問題点があります。なぜなら、犯人探しや個人に責任を押し付けるだけで終わってしまい、真の問題解決にならない恐れがあるからです。

たとえば、先ほどのパソコンの組み立てラインの例なら

  • 「なぜねじが締められていなかったのか」 → 「設備のねじが欠品していた」
  • 「なぜ欠品しているのに設備が止まらなかったのか」 → 「センサーが壊れていた」
  • 「なぜセンサーが壊れたのか」 → 「経時劣化のため」
  • 「なぜ経時劣化が起こったことに気づかなかったのか」 → 「点検リストに入っていなかった」
  • 「なぜ点検リストに入っていなかったのか」 → 「Aさんが点検リストに入れ忘れた」
  • 「なぜAさんは点検リストを入れ忘れたのか」 → 「リストを作ったときに体調が悪く、意識が低下していた」

のようにすることもできなくはありません。

ここでの問題点は、問題の原因を個人の責任に押し付けてしまっている点です。Aさんの体調がよければ点検リストを入れ忘れなかったのか、Aさんの意識が足りていれば問題は起きなかったのか……そんなことはありません。人は誰もがミスを犯すものです。

もし、Aさんの責任にしてなぜなぜ分析を終わりにしたら、何の問題解決にもならないでしょう。

なぜなぜ分析のポイント

なぜなぜ分析のポイントは、仕組みやシステムの問題を組織として改善する視点を持つことです。

たとえば、昨今は各企業の個人情報漏えいが問題になっています。このような問題をなぜなぜ分析すると……

  • 「なぜ個人情報漏えいが起きたのか」 → 「個人情報に対する意識が足りなかった」

のように、問題を個人の意識の問題にすると、根本的な問題解決にはなりません。仕組みやシステムのほうに目を向ける必要があります。

  • 「なぜ個人情報漏えいが起きたのか」 → 「個人情報に簡単にアクセスできた」
  • 「なぜ個人情報に簡単にアクセスできたのか」 → 「情報の取り扱いレベルがアカウントで分けられていなかった」
  • 「なぜアカウントで分けられていなかったのか」 → 「情報の重み付けが定義されていなかった」

このような形なら「意識」の問題にしておくよりも具体的で、対策として何をすべきなのかも明確になります。

もちろん、個人の意識教育も大切です。しかし、さらに大切なのは組織の仕組みやシステムとして改善することです。

なぜなぜ分析を成功させる3つのポイント

とはいえ、ポイントが具体的でないとうまくできないかもしれません。そこで、「なぜ?」という問いのポイントをもう少し具体的にまとめてみました。

「なぜ?」の視点を個人から組織・仕組み・システムに向ける

これまでお話してきたように、「なぜ?」の視点を組織・仕組み・システムに向けましょう。

「なぜ?」の視点を意識から行動に向ける

「なぜ?」の問いを行動に向けることで、人の意識から離すことができます。

たとえば、Aさんが情報漏えいをしてしまった場合なら、「なぜAさんは情報漏えいしたのか?」とすると、視点はAさんの意識に向いてしまいますが、「なにがAさんに情報漏えいをさせたのか?」にすると、視点を仕組みやシステムに向けることができます。

ポイントは、「なぜ、そうなってしまったのか?」ではなく、「何が、そうさせたのか?」です。

「なぜ?」の主語を「私達」にする

「なぜ?」の問いの主語を、「あの人は」から「私達は」に変えるのもいい方法です。

たとえば、Aさんが情報漏えいをしてしまった場合なら、「なぜAさんは情報漏えいしたのか?」とすると、視点はAさんの意識に向いてしまいますが、「なぜ私たちはAさんに情報漏えいさせてしまったのか?」にすると、視点を仕組みやシステムに向けることができます。

まとめ

なぜなぜ分析のポイントについてまとめてみました。いかがでしたか?なぜなぜ分析を使って問題が再発しないよう、最善を尽くしたいものですね。

一方、なぜなぜ分析は、問いが「なぜ?」という原因分析である特性上、「なぜ?」「どうして?」のように個人を追及する形になりやすい特徴があります。大切なのは、個人を責めることではなく、組織として問題を解決すること。そのためには、なぜなぜ分析を単なる手法と捉えるのではなく、「よりよくしていこう!」という意識と、ざっくばらんに意見を言い合えるコミュニケーションの風土が大切です。

また、なぜなぜ分析は、過去に目を向けて問題の原因を解決する手法ですが、筆者は、過去だけではなく、未来に目を向けることも、問題解決には大切なのではないかと思っています。

次の記事TCM―未来視点の問題解決手法では、 現在起こっている問題を明確にしながら、未来に目を向ける問題解決手法について解説します。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

メールマガジン

MAIL MAGAZINE

メールマガジンをお読みになりませんか?

コミュニケーションやチームづくり、自分との関わり方、これからの働き方など、「楽しくはたらく」ヒントをお送りしています。