質問とは、情報を共有し、120%の可能性を引き出すこと
質問の一般的なイメージは、「わからないことを相手に聞いて、明確にする」ではないでしょうか。学生時代や社会人になって間もないころは、「わからないことは積極的に質問しなさい」と、よく言われましたよね。
実は、質問にはそれ以外にも、情報を共有したり、考えるきっかけを作ったり、思い込みをゆるめたり、やわからく要求したりするなど、非常に優れた効果があるのをご存知ですか?意識的に使うことによって、コミュニケーションを豊かに、さらには、人生を豊かにしてくれるほどのパワフルな効果があります。
そこで、本記事では、改めて「質問とは何か」を考えながら、どのような役割・効果があり、どのようなシーンで活かすことができるのかをみていきます。
一般的な「質問とは何か」
まず、質問の意味を辞書で調べてみました。
[名](スル)わからないところや疑わしい点について問いただすこと。また、その内容。「―に答える」「先生に―する」
出典:質問 | goo辞書
一般的なイメージは、まさにこれですね。
質問とは、情報を共有し、120%の可能性を引き出すこと
「わからないことを相手に聞いて、明確にする」はもちろんのこと、改めてまとめてみると、質問には次のような効果があります。
- わからないことを聞いて、明確にする
- 情報を明確にし、共有する
- 考えるきっかけを作り、解決策を見つける
- 思い込みによる制限をはずす
- やわらかくお願いする
- 要求する
- 強調する・納得感を作る
- 選択させる
このような、非常に優れた効果があるので、しごとのみらいでは、次のように定義しています。
質問とは、情報を共有し、120%の可能性を引き出すこと
では、効果を一つひとつみて行きましょう。
質問の優れた8つの効果
わからないことを聞いて、明確にする
1つ目の効果は、「わからないことを聞いて、明確にする」です。
たとえば、仕事のやり方がわからないとき、上司に「これはどうすればいいのですか?」と教えを請いますよね。わからないことを知っている人に問うと、不明点が明確になるほか、知識を増やすことができます。
情報を明確にし、共有する
2つ目の効果は、「情報を明確にし、共有する」です。
コミュニケーション心理学の書籍、加藤聖龍著『手にとるようにNLPがわかる本(かんき出版)』には、次のような記述があります。
昨日の夕食にカレーライスを食べた人に「昨日、何食べた?」と聞くと、たいていの人は「カレーライス」と答えるでしょう。
しかし、この答えには多くの情報が省略されています。カレーライスの具は何だったのか、何カレーだあったのかといったような情報です。
出典:加藤聖龍著『手にとるようにNLPがわかる本』 | かんき出版
さらに……
「体験」そのものは多くの情報を持ちますが、「言葉」ではそのほんの一部しか表現できないため、コミュニケーションにおいて、情報が「省略(削除)」されてしまっているのです。それによって、相手にうまく思いが伝わらなかったり、相手を理解することがむずかしくなってしまうのです。
出典:加藤聖龍著『手にとるようにNLPがわかる本』 | かんき出版
このように、人は、実際に体験したことや、頭の中で考えていることを言葉にするときに、その全てを言葉にすることができません。
相手が言葉にできた情報が100%だったとしたら、相手に問いかけつことによって、120%の情報を共有することができます。それだけ、分かり合えるでしょう。
考えるきっかけを作り、解決策を見つける
3つ目の効果は、「考えるきっかけを作り、解決策を見つける」です。
たとえば、「今月の営業会議のテーマ、どうしましょうか?」とたずねてきた営業スタッフAさんに、「Aさんは、何かテーマ持ってる?今、困っていることや感じていることはない?」のように問いかけると、Aさんは「今、困っていることは何だろう?」と考え始め、必要な答えや解決策を見いだすでしょう。
このように、質問には、「考えるきっかけを作り、新しい可能性を引き出す」効果があります。問いかけられなければそれ以上考えることはありませんが、問いかけられることによって考え、新しい解決策が見いだせたら、120%の可能性が生まれるのではないでしょうか。
これは、コーチングの手法として使われています。
思い込みによる制限をはずす
4つ目の効果は、「思い込みによる制限をはずす」です。
どんな人でも、さまざまな思い込みを持っています。「自分にはきっとできる」のようなポジティブな思い込みは、行動力につながりますが、「どうせ私には何もできない」のようなネガティブな思い込みは、行動の制限になることがあります。
質問には、ネガティブな思い込みをゆるめる効果があります。
たとえば、「私はいつも失敗ばかりで、全然うまく行かないんです」という若手スタッフに、「いつもって、本当にいつも?一度ぐらいはうまく行ったこと、ない?」「誰と比べて?」のように問いかけるとすると、「いつもではないかも……」「他の人はどうなのだろう?」のように、意識を切り替えることができます。「彼は全く分かっていない!」と怒りを隠せない同僚には、「全くって、例えば?」と具体的にするように問いかければ、全くではないことに気付く可能性が生まれます。「プライベートよりも仕事を優先すべきだ」と、ストレスを抱えている同僚には、「何があなたに、そう思わせるの?」と問いかければ、過去に、そう思うに至った経験を思い出し、そうでなくてもいいのかもしれない……という気付きが生まれるかもしれません。このように、思い込みによる制限がはずれれば、120%の可能性が生まれます。
質問は、カウンセリングの手法として使われています。
やわらかくお願いする
5つ目の効果は、「やわらかくお願いする」です。
相手にお願いしたいことを、「○○していただけますか?」のように質問の形(疑問形)で表現すると、やわからくお願いすることができます。
たとえば、いつも大きな声で話す同僚に、もう少し静かな声で話して欲しいとき、「みんな仕事をしているんだから、もっと静かに話してよ」と直接的にいうと、きつい感じになりますが、「もう少し静かに話していただけますか?」のように疑問形にすると、やわらかくお願いするニュアンスになります。
要求する
6つ目の効果は、「要求する」です。
相手に要求したいことを、「○○できますか?」のように質問の形(疑問形)にすると、やわらかい印象で要求できます。
たとえば、急ぎの報告書を部下に依頼する際、「これ、急ぎの報告書だから、明日の朝までに仕上げてほしい」と直接的にいうと命令口調になりますが、「これ、急ぎの報告書なんだけど、明日の朝までに仕上げることはできる?」のように疑問形にすると、やわらかく要求するニュアンスになります。
強調する・納得感を作る
7つ目の効果は、「強調する」です。
言いたいことの後に、「そうじゃない?」「そうでしょう?」を追加すると、言いたいことを強調することができます。
たとえば、「大切なのは、“何をするか”ではなく、“何のためにするか”なんじゃない?そうでしょう?」のような具合です。
選択させる
8つ目の効果は、「選択させる」です。
複数の選択肢の中から選択させることができます。
たとえば、「A案とB案があるけど、どれにする?」のようにすると、相手にどちらかを選択させることができます。また、「やるなら、今からにする?それとも、後からにする?」のようにすると、”やる”ことを前提に会話をすすめることができます。
質問は意識が向く方向を決定付ける
質問されると、人は、物事を考え始めます。そのため、「どのように問いかけるか」によって、相手の思考をポジティブにも、ネガティブにもできます。
たとえば、仕事でトラブルが発生したときに、「なぜ、失敗したの?」のような、原因追求型で問いかけると、相手の意識は問題が起きた原因や、過去のネガティブな状況に向きます。一方、「この経験を活かすためにはどうすればいいと思う?」のような、解決志向型で問いかけると、相手の意識は問題の解決や、未来のポジティブな状況に向きます。
このように、質問は、相手の意識が向く方向を決定付けます。相手にとって、「ポジティブな思考になる」「役に立つ」「問題を解決する」ように問いかけたいものです。
自分に何を問いかけるかで、人生は豊かにも窮屈にもなる
また、まわりの人だけではなく、「自分に何を問いかけるか」も大切です。思考は感情を生み、行動を生むので、ポジティブな問いかけは人生を豊かにし、ネガティブな問いかけは人生を窮屈にします。
「言葉」が専門のクリスティーナ・ホール博士は、著書『言葉を変えると、人生が変わる』(VOICE)の中で、次のように言っています。
「質問は経験をより豊かにすることができる、理解を深めることができる、何か新しいことを学ぶことができる」
出典:クリスティーナ・ホール著『言葉を変えると、人生が変わる』(VOICE)
まとめ
「質問とは何か」についてまとめました。さまざまな使い方があることがお分かりいただけたでしょうか。
質問とは、情報を共有し、120%の可能性を引き出すこと。そして、コミュニケーションを、人生を豊かするほどパワフルな効果があります。その影響力を改めて意識して、まわりの人にも、そして、自分にも、ポジティブな言葉を投げかけたいものですね。
投稿者プロフィール
- 1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。
最新の投稿
- お知らせ2024年11月26日青森中央学院大学「これからの青森ワーケーションを考える-vol.2-」に登壇します
- メディア2024年11月26日「Speakers.jp」に掲載されました
- メディア2024年11月20日エンジニアにとっての「リスキリング」とは何か?──@IT自分戦略研究所の連載に記事が掲載されました
- お知らせ2024年11月11日専門学校・大学講師のお悩み解決サイト「ウイナレッジ」で、連載3回目の記事が公開されました
メールマガジン
MAIL MAGAZINE
メールマガジンをお読みになりませんか?
コミュニケーションやチームづくり、自分との関わり方、これからの働き方など、「楽しくはたらく」ヒントをお送りしています。