傾聴とは相手に意識を100%向けて理解しようとすること

ビジネスシーンでは、コミュニケーションが大切だといわれます。

特に近年は多様な価値観があり、さまざまな職場で「分かり合えない」「ギスギスしている」などの問題が起こっている企業も多いようです。しごとのみらいに各企業様からお問い合わせいただく実際の声でも、このような内容は多いです。

コミュニケーションで最も大切なことの一つに傾聴があります。傾聴とは、「話を聞く」ことですが、「社員の話は聞いているが、なかなか分かり合えない」という声もあります。

例えば、先般、ある企業様で、管理職層と一般社員層にアンケート調査をしたところ、管理職層は、「話を聞いている」と回答していたのに対し、一般社員層は、「職場のコミュニケーションが悪い」「上司は話を聞いてくれない」などの声が挙がっていました。

そこで、「話を聴くとは」「傾聴とは」何かについて改めて触れ、ビジネスシーンで役立つ傾聴について考えます。

傾聴とは?

そもそも、傾聴にはどんな意味があるのでしょうか。辞書によれば……

[名](スル)耳を傾けて、熱心に聞くこと。「―に値する意見」「―すべきお話」

出典:傾聴 | goo辞書

とありました。

漢字の成り立ちに見る「聞く」と「聴く」の違い

「きく」という漢字には、「聞く」と「聴く」がありますが、漢字の成り立ちからその意味を調べてみました。

形声文字です(耳+門)。「耳」の象形(「きく」の意味)と「両開きの扉」の象形から「たずねてきく」を意味する「聞」という漢字が成り立ちました。

出典:「聞」という漢字| 漢字辞典-OK辞典

形声文字です。「耳」の象形と「上にまじないの印、十をつけた目の象形と心臓の象形」(「まっすぐな心」の意味)から、「(耳を突き出し、まっすぐな心で)よくきく」を意味する「聴」という漢字が成り立ちました。

出典:「聴/聽」という漢字 | 漢字辞典-OK辞典

傾聴とは「耳を傾け、まっすぐ心できく」こと

「聴」という漢字の意味が、「(耳を突き出し、まっすぐな心で)よくきく」ならば、傾聴とは、

「耳を傾け、まっすぐな心でよくきく」

ということになるでしょう。

傾聴とは「相手に意識を100%向けて理解しようとする」こと

では、何のために傾聴するのでしょうか。しごとのみらいでは、傾聴を次のように定義しています。

相手に意識を100%向けて理解しようとすること

一般的に、人は話をきく際、相手の言葉を耳にしながら、頭の中では無意識に、「その通りだ」と同意したり、「それは違う」と批判したり、「それよりも、こっちの方がいい」と評価したりしています。つまり、意識は自分に向いているわけです。

人の意識はその瞬間に、一つのことにしか向けることができません。そのため、自分に意識が向いてしまった分、相手への意識は薄れてしまいます。つまり、鼓膜は振動していても、相手の声は本当の意味では届いていないのです。

それを避けるためにも、相手に100%意識を傾けて話をきく必要があるのです。

もちろん、100%といっても、実際のところは「この人は何を言いたいのだろう?」のように頭の中で思考しながら話をきいていますから、現実的には100%ではないかもしれません。けれども、意識しなければ、自分の思いで頭が一杯になってしまいます。そこで、気持ち的には「相手に意識を100%傾けておこう」と思っているぐらいがちょうどよいのです。

傾聴の技法

傾聴の技法は、とてもシンプルです。相手の話を「繰り返す」という、プロのコーチやカウンセラーが使う方法が非常に効果的です。詳しくは、話を聞く効果を最大化する2つの傾聴技法と6つのポイントも合わせてご覧ください。

傾聴の目的

傾聴の目的について考えてみました。ビジネスシーンでの職場内の人間関係構築や、顧客との信頼関係構築に役立ちます。

聞き手にとって

  • 相手が置かれている状況や気持ちが分かる。理解できる。

話し手にとって

  • 分かってくれる人がいるだけでうれしくなる。安心できる
  • 心の中で抱えていたことを手放せ、気持ちが軽くなる
  • 言葉にすると、自分の気持ちを客観的に触れることになり、本当の気持ちに気付いたり、頭の中が整理できたりする

まとめ

哲学者のモーティマー・アドラーはこういったそうです。

「聞くことは、主に頭脳の仕事だ。耳ではない。もし、頭脳が聞くという活動に参加していなかったら、それは「聞く」ではなく「聞こえる」と表現すべきだ

傾聴とは、「この人は何を言いたいのだろう?」のように、相手に意識を100%向けて理解しようとすること。そのためには、頭を使います。

相手を理解し、よりよいコミュニケーションをはかるためも、「耳を傾け、まっすぐ心でよくきく」意識を持っていたいものです。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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