不快感を与えてない?しぐさの心理観察が難しい6つの理由と解決策

あなたは、「あの人がどう思っているのかを知りたい」と思ったことはありませんか?

ビジネスシーンでは、上司、同僚、部下、顧客など、さまざまな人との関わりがあります。もし、相手の本心が表情やしぐさから分かったら、もっと人間関係がよくなるかもしれませんし、相手に合わせた提案ができるかもしれません。

そしてなにより、「ひょっとしたらあの人に嫌われているんじゃないか……」のような、やきもきした時間を少なくできるかもしれませんよね。

インターネットで、「しぐさ」と検索すると、「よく鼻を触る人はウソをついている」「腕を組んでいるのは拒絶のサイン」「頭に手をやるときは緊張しているサイン」など、さまざまな情報があります。読み物としては面白く、「今度試してみようかな?」と思いませんか?

一方、実際に活かすとなると、少しハードルが高いのかもしれません。たとえば、「腕組みをする人の心理」という条件でいくつかのサイトを検索してみたら、「相手を警戒している」「集中して考えている」「怒りの前兆」「優位に立ちたい」「話を聞き入れていない」など、非常に多くのものがありました。「腕組み」だけでこれだけある中で、相手の心理を見抜くのは至難の業です。

また、相手を疑ってかかったり、「心の内をさぐってやろう」と相手のしぐさをじろじろ見るような関わり方では、むしろ不快感を与えかねません。

実は、しぐさには「心理を読み取る」以外にも活用方法があります。そして、相手といい関係を築くためには、こちらのほうが大切なのです。

そこで、この記事では、しぐさによる心理分析が難しい理由と、なぜ、相手の心理が知りたいと思うのか、しぐさをよりよい関係作りに活かすポイントについてお話します。

しぐさによる心理分析が難しい6つの理由

まず、しぐさによる心理分析が難しい理由を挙げてみましょう。

人は同時に多くのことを意識できない

人がある瞬間に意識できるのは一つだけです。相手のしぐさを観察しながら、「よく鼻を触っているから何かウソをついているな」と分析し、相手と会話するのはとても難しいことは、想像すればお分かりいただけるでしょう。

もちろん、訓練すれば同時に複数のことが行えるようになりますが、プロのカウンセラーでもない限り、他に時間を使ったほうがいいでしょう。

そもそも、分析が難しい

しぐさによる心理分析は、それ自体、かなりハードルが高いです。

たとえば、相手のことを知る分析的なもので、もっともポピュラーなのが血液型ですが、血液型でさえ、当てるのが難しいのは多くの方が経験していることでしょう。

情報自体があいまい

先ほどの、「腕組みをする人の心理」という情報がそうであるように、しぐさと心理との関係の情報は経験則的なものが多く、どれも、「そうかな?」と思えますが、実証されたものではないものも多く、情報源もあいまいです。

しぐさの意味は言葉の文脈や関係性によって変わる

しぐさの意味は、相手が発した言葉の文脈や、相手との関係性によっても変わります。楽しそうな会話の中で「腕を組む」のと、怒りの文脈の中で「腕を組む」のとでは、その意味が変わって当然です。

人は自分のものさしでしか相手を見ることができない

強面の人を見て、「あの人は怖い人に違いない」と思う人もいれば、「あの人は頼りになる人だ」と思う人もいます。人は、自分のものさしで物事を理解しようとするため、同じ人を見ても、人によって解釈が異なります。その状態で相手が何を思っているのか判断するのは、ますます難しいでしょう。

相手を枠にはめることで、かえって人間関係を悪くする

「あの人は○○と考えているに違いない」のように、分析的に相手を見るようになると、相手を枠に当てはめることになり、かえって人間関係を悪くしてしまう恐れがあります。

なぜ、相手の心理が知りたいと思うのか

しぐさで相手の心理を知りたいと思うのは、「相手とよりよい関係になりたい」のではないでしょうか。だからこそ、「相手が言葉にしていない本当の気持ちを知りたい」と思うのではありませんか?

それならば、しぐさで相手のことを理解しようとするよりも、しぐさを、相手とよりよい関係を作るために使うほうが、よいのではないでしょうか。

しぐさをコミュニケーションに活かすポイント

しぐさを意識すると、相手とよりよいコミュニケーションを取ることに役立ちます。その結果、相手と信頼関係を築けるようになり、よりよい関係を築けるようになります。

心と心の架け橋をかける

「同じ出身だと会話が弾む」「雰囲気が似ていると話しかけやすい」のように、私たちは「会う」ということに、なんとなく親近感を抱きます。そこで、親近感を作り、心と心の架け橋をかけるためにしぐさを活かしましょう。

相手のしぐさを観察して、しぐさや表情や声のトーンを相手のペースに合わせていけば、心と心が通じやすい、和やかな場が作れます。

詳しくは、信頼関係(ラポール)を築く8つのポイントも参考にしてください。

相手の変化を知り、対処する

しぐさをコミュニケーションで活かす上で大切なのは、「変化を知り、対処する」ことです。

たとえば、今まで大きいジェスチャーで興奮気味で話していたが落ち着いてきたり、今まで和気あいあいとしていたのに、急に表情が硬くなり腕組みをはじめたりした場合は何かのサインです。「落ち着いた」「話題を変えたい」「嫌な気分だ」など、相手には何かしらの「訴えたいこと」があります。

このような変化を察知するのが「観察」です。しぐさをよく観察すると、相手の変化を知り、柔軟に対処することができます。

詳しくは、コミュニケーションの基本「観察力」の鍛え方も参考にしてください。

まとめ

すでにお話したように、相手といい関係を築きたい人ほど、しぐさから相手の心理を読み取りたいと思うものです。一方、実際にはとても難しく、相手に不快感を与えてしまう恐れがあります。

一方、しぐさをコミュニケーションに活かすことなら、比較的容易です。しぐさから相手の状況を知り、ペースを合わせていくことで、心理を読み取るよりも簡単に、よりよい関係を作ることができるでしょう。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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