ゆとり世代の特徴に見る教育方針と自発性の高め方

「ゆとり世代とどう関わったらいいか分からない」――管理職層の人たちから、よく耳にする声です。

具体的には、「自主性がない」「仕事に対する情熱や『こうなりたい』という意欲が感じられない」「仕事とプライベートを分けたがる」「ちょっと叱るとすぐに落ち込む」「理屈っぽい」「宴席でのマナーがなっていない」など、さまざまな意見があるようです。

逆に、そのように言われて嫌な気持ちになる若い世代の方も多いでしょう。

社会人になって2~3年は、社会人としてのあり方を学ぶ時期。それだけに、管理職は教育をしなければなりませんが、「いっても伝わらない。改善しない」「どう伝えたらいいのか分からない」と困っている管理職層の声をよく耳にします。

そこで、本記事では、「ゆとり世代の教育」について見ていきます。この記事を読むと、「何を、どう伝えればいいのか」が分かります。

ゆとり世代の特徴

異なる世代と上手く関わるためには、まず、相手の特徴や時代背景を知ることが大切です。そこで、ゆとり世代の特徴について見ていきましょう。

ゆとり世代とは、2002年から2010年に施行された学習指導要領に沿った教育を受けた世代のことを指します。

ゆとり世代の特徴について、日本経済新聞の「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」… サラリーマン世代論では、次のように紹介しています。

 特徴的なのは前の世代と比べ、自分の内的な部分に忠実だという点。仕事は手段ではなく、より目的化しており、地位や年収という外的なものでなく、自分自身が充実することを重視する。会社や上司との関係はドライで自分の時間を大切にし、ワークライフバランスを権利として主張する傾向が強い。

指示待ち、リスク回避志向などと批判され、仕事中心だった上の世代からは違和感を持って語られることが多いが、会社に頼らず、自分の内的な信念に忠実に生きようという良質な人材も生まれている。国際貢献や社会福祉、環境保護など分野でリーダーとして活躍する人も目立つ。

出典:「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」… サラリーマン世代論 | 日本経済新聞

一方、管理職層であるバブル世代(1965~69年生まれ)の特徴を見てみましょう。

 企業では既存ビジネスがうまく回らない一方、新しいことをやる機運は旺盛。新人たちは雑巾掛けをすることなく「新規事業開発室」などに配属され、若い発想を生かした新規ビジネスに挑戦することを求められた。豊かな発想力を持つ優秀なプロデューサーが数多く誕生したのも事実だが、好景気を背景に企業の決裁が緩くなり、若手の提案が通りやすかったため勘違いする若者も多かった。

~中略~

若者の間に「仕事は会社から与えられるのではなく自分で生み出すものだ」という意識の変化が生まれ、働く目的が食べていくためや家族のためではなく、仕事そのものが目的化し始めた世代でもある。

出典:「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」… サラリーマン世代論 | 日本経済新聞

このように、世代の特徴を見てみると、育ってきた時代背景によって物事の捉え方が異なることが分かります。

例えば、「仕事は会社から与えられるのではなく自分で生み出すものだ」――つまり、自発性が大切――という価値観を持っているバブル世代から見ると、ゆとり世代の「会社や上司との関係はドライで自分の時間を大切にし、ワークライフバランスを権利として主張する傾向が強い」という特徴は自発性や協調性に欠けているように見えるかもしれません。

私たちは物事を、自分の価値観を中心に捉えます。当たり前ですが、自分の中では「自分の価値観が正しい」わけです。そのため、自分たちの世代感から見ると、若い世代の考え方や振る舞いに違和感を覚える。「なんであの人たちは、あのように捉えるのだろう?」「普通は○○するのが当たり前だろう」と疑問に思う。そして、時には感情的になってしまうのです。

ゆとり世代との「意識的なギャップ」を埋めるためには?

自分の価値観を絶対視していると、他の世代との価値観のギャップを埋めることができません。

ゆとり世代とのギャップを埋めるためには、主観的な自分から距離を置いて、自分と相手を少し離れたところから客観的に見てみるのが効果的です。

そのためには、「自分は、この考え方が絶対に正しいと思っているけれど、なぜ、これが正しいと思っているのだろう?」「○○さん(相手の名前)は、□□だと言っているようだけれど、なぜ、そのように考えるようになったのだろう?」のように、自分や相手が、「そのように考えるようになった背景」や「それが正しいと思うようになったきっかけ」を考えてみましょう。

こうすることで、自分と相手を客観的に眺めることができます。感情的になっている自分から少し離れて、相手との「違い」が意識できると、「自分のときは○○だったけれど、ゆとり世代はきっと□□なのだな」のように、ギャップを縮めるきっかけを作ることができます。

ゆとり世代の教育方針

日経新聞の記事にもあるように、実は、ゆとり世代には「仕事は手段ではなく、より目的化している」「自分自身が充実することを重視する」「会社に頼らず、自分の内的な信念に忠実に生きようという良質な人材も生まれている」という特徴があります。

筆者には、これが実体験として実感できます。筆者はしごとのみらいというNPO法人を経営していますが、「社会が抱える課題を解決する」というNPO法人の性格上、さまざまなNPO法人の方と関わる機会があります。中には、「○○の課題を解決したい!」と、熱い情熱を持っている若い世代の方もいます。

また、メディアで報じられている内容を見ると、社会的な課題に対し、若い世代が積極的に行動しているシーンを見る機会が増えていることに気付かれるでしょう。

このように、ゆとり世代は自分自身の充実感や、内的な信念を大切にする傾向があります。ゆとり世代を教育するためには、これらを刺激することが大切だと言えそうです。

ゆとり世代の自発性を高める教育的な伝え方

「自分の内的な信念」とは、「自分とは何者なのか?」という自己認識(アイデンティティ)や、「自分の使命は何なのか?」「何のために働くのか?(働く目的)」といった信念・価値観のことです。

仕事は手段ではなく目的化していて、自分自身の充実感や、内的な信念を大切にするゆとり世代の自発性を刺激するためには、仕事の目的を積極的に伝える必要があります。

具体的な伝え方としては……

  • 「○○(やってほしいこと)をすると、□□(その目的)になれるよ」
  • 「○○(やってほしいこと)をしてくれないかな、なぜなら、□□を△△にしたいからなんだ(その目的)」

のように、「やってほしいこと」と「その目的」をセットにして伝えるのです。

例えば、携帯電話の販売店で働くYさん(管理職)は、以前、若い社員がすぐに辞めてしまうことに悩んでいました。そこで、「挨拶を積極的にすると(やってほしいこと)、お客さんが喜んでくれるよ(その目的)」「今、この課題をすることによって(やってほしいこと)、将来、あなたは○○になれるよ(その目的)」のように、「やってほしいこと」と「その目的」をセットにして伝えるように意識したそうです。

Yさんは言います。「目的を意識的に伝えるようにしてから、若い社員の離職率がだいぶ減りました。目的を伝えることで仕事の意味――なぜ、それをするのか?――が伝わるので、自分で考えて動く社員も増えました。また、『○○をすると、将来あなたは○○になれるよ』のような伝え方は将来のビジョンを示すことにもなるので、若手社員の動機づけにもつながっているのではないかと思います」

自発性を高めるには「目的を問う」のもいい方法

若手社員の中には、経験が少ないがゆえに、そもそも「なぜ、それをするのか」が分かっていないこともあります。そのため、管理職層が「○○をしてほしい」といったことしかしない。というより、できないといったほうがいいかもしれません。

若手社員の自発性を高めるには、こちらから仕事の目的を提供するだけではなく、「目的を問う」のもいい方法です。特に、ルーチンワークのような「やって当たり前」の仕事の目的を問うと効果的。

たとえば、本当は自分の意見を加味して企画書を書いてほしいのに、以前先輩社員が作った企画書をコピー&ペーストして日付だけ変えて持ってくるような若手社員には……

  • 「この企画って、そもそも何のためにあると思う?」
  • 「これの企画が上手くいったら/上手くいかなかったら、どうなる?」

のように、「そもそも」や、「それによって、どうなる?」という問いは、仕事の目的を考える問いとして便利です。

自発性や情熱は内的なモチベーション

それぞれの世代には、経験によって培ってきた「○○とは、こういうものだ」という、それぞれの「正しさ」があります。そのため、若い世代が別の行動や捉え方をしていると、「そうじゃなくて、こっちだろう」のように、自分の価値観を押し付けてしまいがちです。

また、現在の管理職層は、上の世代から叱咤激励されて育ってきました。そのため、自分たちがされてきたように、つい、若手世代の悪いところを見つけては指摘したり、「これは昔からこういうものだ。いいからやれ」のように、目的を伝えず作業だけを伝えたりしてしまいがちです。

しかし、これでは「仕事の目的」や「自身の充実感」、「内的な信念」を大切にするゆとり世代の心の琴線には響きません。

自発性や情熱は、「もっと自発的になれ」「もっと情熱を持て」のように、外的な指示をしても出てきません。なぜなら、自身の内側から湧いてくる内的なモチベーションだからです。

ゆとり世代は自発性がないわけでもないし、仕事に対する情熱がないわけでもありません。それらがまだ、見いだせていないだけです。だからこそ、管理職層は、ただ「やってほしいこと」を伝えるだけではなく、「なぜ、それをするのか」「それをすることによって、どうなるのか」のように、目的をセットで伝えてみてください。そして、「それをすれば、こうなれるよ」と、未来のビジョンが描けるように伝えてみてください。

ゆとり世代の琴線に触れたとき、「何のために働くのか」が見えたとき、自然と、自発的に、情熱的に育てることができるでしょう。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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