ビジネスパーソンとうつ病―日ごろから心を整える大切さ

職場の人間関係や、多すぎるタスクなど、仕事をしていると、多かれ少なかれストレスを抱きます。

ビジネスパーソンのメンタルヘルスが社会的な課題になっている昨今、「うつは心の風邪」「早期発見、早期治療が有効」などのような言葉をよく聞くようになりました。ひょっとしたら「自分もいつかうつになってしまうのではないか」……というような、恐れに近いものを抱いている方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、「ビジネスパーソンとうつ病」について考えてみます。

なぜ、うつ病は増えたのか

@IT 自分戦略研究所 自分戦略研究室に、「なぜ、うつ病は増えたのか」という記事が掲載されていました。

この記事を要約すると……

  • 「うつ病患者数は増えている」ように見えるが、「うつ病という病名で医療機関を受信している人が増えた」。もっと正確には、「うつ病、または抑うつなどのうつ状態と診断され、医療機関を受診している人が増えた」
  • 以前と現在では、うつ病の診断方法が異なる。現在のほうがうつ病と診断される範囲が広がり、かつてはうつ病と診断されなかった人もうつ病と診断され、医療機関を受診するようになった
  • 「うつ病」の啓発活動が行われ、うつ病や精神科に行くことの抵抗感が弱まり、今までよりも精神科の門戸をたたく人が増えた

引用:なぜ、うつ病は増えたのか |(@IT 自分戦略研究所 自分戦略研究室)

としています。最後は次のようにまとめられています。

もちろん、調子が悪いときに病院に相談し、医師の診断に従うのは大切なことです。しかし自分の行動や考えをある程度コントロールできる状態にあるならば、それだけではなく、不調に至った原因の改善や、生活のリズムを作るなど、自分でできることも同時に行っていくことも大切なのではないでしょうか。

引用:なぜ、うつ病は増えたのか |(@IT 自分戦略研究所 自分戦略研究室)

日ごろから「心を整える」ことの大切さ

筆者もこの記事と同様の意見を持っています。

「歩くことができない」「震えが止まらない」「食事ができない」のような、心身ともにコントロールできない場合は、医師の診断を受けて身体を整えることが先決だと思います。

一方、「気分が乗らない」「ゆううつな日が何日か続いている」ような場合は、日ごろから「信頼できる人に話してみる」「生活のリズムを整える」など、自分で「心を整えていく」ことも大切だと思っています。

その理由は3つあります。

1.結果よりも原因の解決が大切なこと

うつ病という「結果」を招く背景には、職場の人間関係や仕事のストレス、プライベートの悩みなど、何らかの「ストレスを抱える原因」があります。

「結果」の対処も大切ですが、さらに大切なのは「原因」の対処です。なぜなら、「結果」のみを改善しても、「原因」がそのままだとしたら、また同じことが繰り返される恐れがあるからです。

2.薬の影響が思いのほか心配なこと

仕事柄、うつ病と診断された経験者と話をする機会が一般の方よりも多いほうです。経験者からは「薬の影響はかなり大きい」「薬を飲まないに越したことはない」という声をよく耳にします。

たとえば、先日話を伺ったある方は「薬は急に眠くなったり、気分が変わったりして、自分がコントロールできなくなるのが怖いので、新しい薬を処方された場合は、休日に服用して様子をみてから、平日にも広げることにしている」と言っていました。

「うつは心の風邪」という言葉とのギャップを感じることが多くあります。

3.医療の前にできることがあること

「気分が乗らない」「ゆううつな日が何日か続いている」というようなことは誰しも経験することです。

これらの体験は、「突然降って湧いてきた」ということはあまりなく、「環境が変わった」「少し前から○○だ」のような前兆があります。

状況が深刻になる前に、日ごろから「信頼できる人に話してみる」「生活のリズムを整える」など、自分で「心を整えていく」ことも大切なのではないでしょうか。

医療の前に、できることがあります。

自分でできることを行ったからこそ感じた「いい経験」

20140906

個人的なお話をすることをお許しください。

筆者も以前、仕事で大きなストレスを抱えた経験があります。上司に相談しながら泣いたり、帰宅後に布団に入っていたら自然と涙があふれたりしました。3階の窓から下を眺めて、「ここから飛び降りたら楽になれるんじゃないか」とも考えました。あのとき医師の診断を受けたら、うつ病と診断されていたかもしれません。

けれども、筆者は違う方法を選びました。「病院の門戸をたたきづらかった」というのもありますが、「うつ病」というより「ゆううつな日が続いている」と思いました。なぜなら、ストレスを抱えている原因は、病気というよりも仕事であることが分かっていたからです。

そこで、問題の原因を取り除くことを考えました。

まず、心の状態を回復させるために信頼できる人に話を聞いてもらいました。また、周りや自分との関係がよくなるよう、コミュニケーションや心理学を勉強しました。信頼できる人の一言や、自分自身の物事の捉え方が変わってきたおかげで、「うつ病にならずに」済み、問題を解決することができました。

当時は辛い体験でしたが、今では、とてもよい経験だったと思っています。後に大きな自信にもなりました。

追伸

とはいえ、「職場では本音が言えない」という実情もあります。

しごとのみらいには、仕事の話が気軽にできる仕組み【仕事の悩み相談システム】コミュニケーションコンシェルジュがあります。この仕組みは、本記事にある「日ごろから心の状態を整えていくことの大切さ」の経験に基づいています。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。