ビジネスパーソンのストレスを救う―農業の可能性と10の効果

私たちビジネスパーソンは、毎日多くのストレスにさらされています。

厚生労働省が調査した平成24年労働者健康状況調査によれば、約6割の人が強い不安、悩み、ストレスを抱えているといいます。

現在の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は 60.9%[19 年調査 58.0%]となっている。

出典:平成24年 労働者健康状況調査 | 厚生労働省

ストレスはうつなどの精神疾病につながりかねません。

労働者のストレス対策といえば、「早期発見、早期治療」のような医療的な関わりが多いです。厚生労働省が2015年12月1日、メンタルヘルス対策の充実・強化などを目的として、従業員数50人以上の事業場にストレスチェックの実施を義務付ける法律(ストレスチェック義務化)を施行しました。

一方、しごとのみらいでは医療的なことよりも農業の可能性に着目しています。医療ではストレスの根本原因を解決できませんが、農業にはストレス改善に与えるすばらしい効果がありました。その可能性についてみていきます。

農林水産省も着目している「農業によるストレス改善」

農林水産省の平成24年度 食料・農業・農村白書(平成25年6月11日公表)の中に、(2)農業と教育・福祉・観光等との連携というページがあります。このページでは、健康や精神の安定面からみた農業・農村について検証しています。

農山漁村における安らぎや癒(い)やしの提供、農作業等の体験を通じた精神の安定や健康の維持・増進等、農山漁村・農林水産業の有する機能に対する期待が高まっています。

出典:(2)農業と教育・福祉・観光等との連携 | 農林水産省

農作物に接することによる癒し・安らぎ効果や、農作業を行うことによる健康維持、増進の効果に着目しているそうです。

農業がストレス改善に与える10の効果

筆者も、農業はストレス改善に非常に有効なのではないかと肌身で感じている1人です。

実際、田んぼで米を作ったり、畑で野菜をつくったりしてしていますが、頭や心の整理に意識的に役立てています。その効果をまとめてみます。

1、単調作業をすると頭の中が空っぽになり、無心になれる

「苗を植える」「種をまく」「草をむしる」など、単調な作業を繰り返し行っていると、頭の中が空っぽになります。無心になると、ことのほか頭や心がスッキリできます。

筆者の場合、仕事が煮詰まったり、行き詰ったりしたときは、意識的に畑にいって、草をむしることにしています。

2、暖かい土に触れると心地よい

現代人は、普段日常生活の中で、「土に触れる」ことはほとんどありません。晴れた日の土は暖かく、曇りの日の土は冷たい。土の暖かさは、言葉では表現できない心地よさです。

たまには汚れを気にせず、思いっきり土に触れてみるのはどうでしょうか。

3、きれいになると心地よい

雑草が生えた畑を……

無心になって草をむしって、きれいになると心地よいです。

4、やりきった感が得られ、自己肯定感が高まる

草むしりに限らず、「よし、あそこまで頑張ろう」と決めて、苗を植えたり、種をまいたりすると、デスクワークとは違う達成感が得られます。「あー、オレ(ワタシ)頑張ったなー」のように、自己肯定感も高まります。

5、適度な運動が気分転換になる

野良仕事は、適度に体を使います。程よく体を動かすと気分転換になります。

6、動植物から学ぶことが多い

畑では、小さな虫や雑草を目にします。「あー、アリも頑張っているんだなー」「雑草はどれだけ強いんだよー」など、いろいろと思いにふけります。

また、植物はすぐには育たないので、「仕事で大切なことはコツコツやることだよな」「手を掛けるべきところは掛けないとちゃんと育たないよな」のように思うこともあります。

動植物と自身を重ねて、仕事や生きていく上での大切なことに気付くことも多いです。

以前書いたブログ、仕事で大切なことはすべて畑が教えてくれたも併せてご覧ください。

7、改善意欲が沸く

「去年は○○だったから、今年はもっと□□にしたい」のように改善意欲が沸くこともあります。やったことが目に見えるからなのでしょうね。

8、小さな変化がうれしい

「あ、芽が出た」「あ、花が咲いた」のような、小さな変化は単純にうれしいです。

9、香りで癒される

ハーブ系の植物は香りがとてもよいです。”ふっ”と鼻に通った香りに癒されます。

10、食べておいしい

自分で育てた米や野菜を食べるのは単純においしいです。スーパーで買ってきたものよりも。

まとめ

農業がストレス改善に与える効果と可能性についてみてきました。

近年の労働者のストレスやメンタルヘルス対策では、医療系のものが多いように感じています。医療が大切なシーンもあるでしょう。

一方、ストレスの原因は人間関係や過度な仕事にあります。人間関係や仕事は薬を飲んでも変わらないように、ストレスそのものは医療では解決できない事実があります。

ストレスを解決するためには、頭や心の癒しや、物事の捉え方の変化が必要です。そのためにも、農業や自然が持っている可能性は、非常に大きいのです。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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