職場の「困った人」に効く6つの質問

職場には、いろんなタイプの人がいますよね。ポジティブで前向き、協力的で、自ら積極的に仕事をしてくれる人もいれば、自信がなく、すぐに落ち込んでしまう人もいます。

中には、変に卑屈で斜(はす)に構えている人や、世の中を恨んでいる人、自信過剰で傲慢な人など、いわゆる「困った人」もいます。

例えば……

「自分はこの仕事をやったことがないからできません。やったら必ず失敗します」
「こんなことをしたって、どうせうまく行かないに決まっています」
「失敗したら、自分は精勤を負わされるじゃないですか」
「できないことが分かっているのに強制するのはパワハラです」

このような言動をする人が職場にいると困ってしまいます。特に管理職やプロジェクトリーダーは、困った人を含めてまとめなければならないので大変ですよね。

本当は自分の視界から居なくなって欲しい。けれども、そんな権限はないし、距離を起きたくても同じ職場で働いているとそうもいかないし……。それが、「困った人」の難しさです。

職場の「困った人」には、どのように対処したらいいのでしょうか?

職場の「困った人」が困った言動をする理由

ところで、なぜ、「困った人」は困った言動をするのでしょうか。その理由をひと言でいえば、困った人なりの「思い込み」があるからです。

例えば、冒頭の「やったことがない仕事」に対する言動には……

  • やったことがない仕事 = 失敗する
  • はじめてのこと = うまく行かないに決まっている
  • 失敗 = 責任を負わされる
  • 上司の指示 = パワハラ

のような思い込みがあります。ところが、それが思い込みであることに本人は気付いていません。ほぼ無意識に「○○は、□□である」というネガティブな意味づけをしています。

その仕組みについては、筆者が@IT自分戦略研究所に寄稿している、仕事に「やりがい」がなくていいの?――固定観念の「プログラムバグ」を修正しようにも書きました。よかったらご覧ください。

職場の「困った人」に効く6つの質問

困った人に対処するには、「思い込みをゆるめる質問」が効果的です。

一言で言えば、「それって、本当?」と質問し、考えるきっかけを作ることによって、事実と解釈が歪曲して結びついていることに気付くきっかけを作るわけです。「これは、思い込みにすぎないかも」「そうとは言い切れないかも」のように。

思い込みをゆるめるには、以降ご紹介する6つの質問が効果的です。次の言葉を例に説明します。

「自分はこの仕事をやったことがないからできません。やったら必ず失敗します」

大げさにする

相手の言葉を誇張します。それによって、例外があることに気付かせます。ユーモアたっぷりに、大げさに表現するのがポイントです。

「やったことがない仕事は100%失敗するってこと?コピーをとるぐらい簡単なことでも?」

具体的にする

相手の言葉を具体的にするように問いかけます。具体的にすることによって、例外があることに気付かせます。4W1H(when(いつ)、where(どこで)、who(誰が)、what(何を)、how(どのように))の問いを使って具体的にします。

「この仕事のどこまでを“やったことがない”と判断するの?」
「必ずってどれぐらい?100%ってこと?」

反証する

相手の言葉の反対を示します。視点を別の角度にずらすことで、例外があることに気付かせます。

「あなたが初めてやったことで、上手くいったことは一度もない?」

視点を上げる

相手の言葉より、一つ上の視点を提示します。視点を上げることによって、本当に大切なことに気付かせます。「大切なのは、○○ではなく、□□なんじゃない?」という具合です。

「大切なのは、この仕事をやったことがあるかないかではなく、あなたの可能性を信じてみるってことなんじゃない?」

話は少しずれますが、アルバート・アインシュタインは次のように言っています。これは、「視点を上げる」ということだと理解しています。

“いかなる問題も、それをつくりだしたときと同じ意識によって解決することはできない。”

意図を聞く

相手の言葉の背景にある意図を聞き、客観的な視点に導きます。「何が、あなたに、そう思わせるの?」という具合です。「なぜ?」と何度も質問すると、責め立てられるような感じになるので、「何が、あなたに」とするのがポイントです。

「何があなたに、“初めてのことは失敗する”と思わせるの?」

結末を聞く

相手の価値観を持ち続けることで、どんな結末になるかを聞きます。その思い込みによって、未来がネガティブになることを想像されれば、「この思い込みは必要ない」と気付く効果があります。

「“初めてのことは失敗する”と思い続けることで、どんないいことがありそう?」

思い込みをゆるめる質問を使う際の注意点

困った人が目の前にいるとイラッとしますよね。「懲らしめよう」と思うかもしれませんし、「ちょっと困らせてやろう」という気持ちを抱くかもしれません。

思い込みをゆるめる質問は、相手を「懲らしめ」たり、「困らせ」たりするものではありません。思い込みをゆるめることによって、「相手の選択肢や可能性を拡げる」ためにあります。

そこで、最初は「なるほど、○○さんはそういう風に考えているんだ」のように、まずはペースに合わせ、相手の意見に耳を傾けて信頼関係を築きます。その上で、質問するのが効果的です。

生まれたばかりの赤ちゃんには、思い込みは1つもありません。困った人が思い込みを持つようになったのは、「そう思わざるを得なかった背景」があります。

とはいえ、イラッとしているとき、「選択肢や可能性を拡がりますように」という気持ちを持つのは難しいことかもしれません。その場合は、「何が、彼(女)にそう思わせるんだろう?」のように、彼らが「そう思わざるを得なかった背景」に思いをはせると、相手を理解してみようという気持ちを持ちやすくなるでしょう。

まとめ

困った人の対応はストレスが溜まりますね。だからといって、「その考え方はおかしい!」と真正面からぶつかっていくと、反感を持たれてしまい、よい関係を築くのが難しくなってしまいます。なぜなら、一般的にみたらどんなに偏った考え方でも、当人にとっては、それが「当たり前」で「正しい」考えだからです。

思い込みをゆるめる質問は、相手に考えるきっかけをつくり、「そうじゃないかも?」と気付かせる可能性が生まれます。

困った人がいたら、「それって、本当?」と問いかけてみるといい……と、覚えておいてください。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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