人材不足時代に問われる力:有効なタレントマネジメントとデータ活用の「壁」をどう乗り越えるか

しごとのみらいの竹内義晴です。

人手不足が原因で倒産する企業が、過去最多を大幅に更新しています。この厳しい現実は、これから始まる人口減少の「本番」を前に、すべての企業に突きつけられた課題です。

「新しい人材を採用できない」時代に、今後、企業はどう生き残るのか、どんな人材戦略を立てていけばいいのか? その選択肢の1つが、社員の「タレントマネジメント」です。

本記事では、人材不足時代の人材戦略と、タレントマネジメントについてご紹介します。カギとなるのは、既存社員の能力や資質、価値観などを言語化・データ化し、資格や経験といった目に見える能力だけでなく、その人の「人となり」や「未来の可能性」を明確にすることです。

労働力供給不足はこれからが本番:「人手不足倒産」は他人事ではない

東京商工リサーチの調査によると、2025年1月から10月までの人手不足による倒産件数は323件に達し、前年の同時期と比較して30.7%増となりました。この数字は、過去年間最多だった2024年の292件をすでに2ヶ月残して上回っています。年間で300件を超えるのは、調査開始以来初めてであり、人手不足を原因とする倒産は、今、明らかに増加傾向にあります。

とはいえ、このような情報を見聞きしても、なかなか実感がわかないのが一般的かもしれません。

しかし、事実として、今後、人手不足の状況はさらに加速し続けます。おそらく多くの企業にとって、この課題はもはや他人事では済まされない現実となるでしょう。なぜなら、今後の人口統計の推移でも、人口は減少し続けると予測されているからです。

(出典)内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」

企業の成長のカギは、多様な世代の活躍:外部に頼れない時代の人材戦略

人口減少が進む中で、顕著に減少していくのは若い世代です。今後は、新規採用を含め、外部からの人材確保がますます困難になっていくでしょう。

このような状況下で着目したいのは「今いる人材に、改めて目を向けること」です。

特に労働力人口の中で最も人材が多いミドルシニア世代など、これまで、さまざまな経験を積んできた社内の人材を最大限活かせるかが、今後の企業の成長、ひいてはその生死を分けるカギの一つとなるでしょう。

そうした社内人材の活用という視点で、近年改めて注目を集めているのが「タレントマネジメント」という考え方です。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、社員一人ひとりが持つ知識や経験、スキルなどの情報をデータ化し、採用・育成・配置などを経営の視点から戦略的に行うマネジメントの手法です。

  • 企業側のメリット:長期的な視点での人材育成、適切で柔軟な人員配置、離職リスクマネジメント
  • 従業員側のメリット:キャリアアップ・キャリア自律の機会、業務へのモチベーション向上

タレントマネジメントの導入により、企業の外部からの新規採用に頼るだけでなく、自社に勤務している従業員の中から、適切な人材を発掘し、他部署で活用することが可能になります。

タレントマネジメントで重要な要素:社員の「数値化できない強み」をどう捉えるか?

タレントマネジメントを導入しようとする際、有効に活用するためには大切なポイントがあります。
一言で言えば「企業と社員の双方にとって、有効な人材情報をデータ化すること」です。

資格、スキル、実績といった過去の業務経験に基づいた情報はデータ化が比較的容易です。
一方で、その社員の数値では表しにくいのは……

  • 強みや特性
  • 価値観
  • 未来の意向(これからどのように活躍していきたいか)

といった、その人の「人となり」に関わる情報です。具体的には、コミュニケーション能力、心配り、円滑に物事を進める力、問題解決能力の高さ、人望、人柄などがあります。

社員が望む形で効果的な人材配置を行う際、このような、数値では表しにくいデータも、非常に重要ではないかと、私たちは考えています。しかし、こうした情報を、社員自身が客観的に捉え、言語化するのは、とても難しい作業です。

「目にみえる能力」と「目に見えないその人の特性」の双方をいかにデータ化するかが、タレントマネジメントの成果を左右する「肝」だと言えるでしょう。

多様な人材のデータを見える化する2つのポイント

「企業と社員の双方にとって、有効な人材情報をデータ化すること」を達成するためには、2つの重要なポイントがあります。

1. 社員の強みや未来の意向を言語化する「問いのデザイン」

「目に見えないその人の特性」を言語化するために大きな役割を果たすのが「問い」です。なぜなら、「わたしにとって、大切なことはなにか?」といった問いによって、人は思考をはじめるからです。

しかし、いくら問われたからといって、すぐには答えが見いだせない場合もあります。そこで重要なのが、「問いのデザイン」です。聞きたい内容は同じでも、問いかけ方によって、考えやすさが変わる場合があります。

たとえば、「あなたの強みは何ですか?」と質問されるよりも、「どんなときに楽しいと感じますか?」「〇〇さんてすごいねって言われたときのことを教えてください」のように質問されたほうが、考えやすいでしょう。

2.第三者による「ていねいなヒアリング」

どんなにデザインされた問いでも、自分一人で考えているだけでは、考えや意見を言語化するのは、なかなか難しいものです。

「本当は、どうしたかったの?」のように、第三者から質問されると思わぬ本音や自分の考え方に気づけるように、第三者からのヒアリングによって、社員一人ひとりの強みや特性、価値観、今後のキャリアをどう歩みたいかなどが明確になります。

タレントマネジメントを利用する「社員への動機づけ」

タレントマネジメントを行う場合、社員に対し「タレントマネジメントを実施するから、自分の強みを言語化しておくように」と指示・命令しても、社員が必要性を感じていなければ、タレントマネジメントに関わろうとしてくれないでしょう。

社員から積極的に関わってもらうためには、社員にとってのメリットを提示できるかが重要です。

「会社のために社員を適切に配置するツール」としてではなく、「自分では気づけない強みや、未来の可能性が分かる」「自分が活躍できる最適なプロジェクトに誘ってもらえる」といったメリットが感じられれば、社員の向き合い方は変わってくるでしょう。

また、「自分の強みや特性」「将来どのように活躍したいか」といった言語化が難しいテーマについては、社内でワークショップを行い、言語化をサポートすることも有効です。

人口減少社会でも、企業が成長していくために

人材不足が深刻化するこれからの時代は、社外の人材に目を向けるだけではなく、改めて、社内の人材に着目し、その能力を最大限に活かしていくことが重要です。そのためには、

目に見えない強みを含めた人材のデータを収集し、見える化することによって活用し、企業と社員の双方にメリットのあるタレントマネジメントを実現すること。

そうすれば、人口減少社会においても、企業は成長していくことができるでしょう。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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