NPOPRESSに寄稿記事「社会起業ブームに思う」が掲載されました

上越タイムス NPOPRESS(くびき野NPOサポートセンター監修) 2012年8月6日号の「NPO PRESS時評」に掲載されました。「社会起業ブームに思う」という記事です。

社会起業ブームに思う

  最近、「社会起業」という言葉をよく耳にするようになりました。社会起業とは、行政など、既存の社会システムでは解決できない課題を解決するため、課題認識を持った方が自ら事業を起こして解決していくことです。先行き不透明で不安も多く、東日本大震災を契機にさまざまな社会システムのほころびが表面化している今、「社会を変えたい!」と立ち上がる人が増えるのは素晴らしいことです。

 一方、ちょっとしたブームに心配になることもあります。高い志があるがゆえに日常の雑多な仕事に満足できず、「やりたくないことはやめて、やりたいことをやる」と簡単に会社を辞めてしまう人がいます。

 社会の課題を解決するということは、これまでの社会システムや習慣、考え方を変えていくことでもあります。人は、慣れ親しんだ習慣をできるだけ変えたくない生き物です。新しい習慣や考え方に変えていくのは一筋縄でいかないことも多く、時には、やりたいことが周囲から理解されず批判されたり、悔しい思いをしたりすることもあるかもしれません。それを乗り越え、形にしていくためには、長期的な視点やさまざまな試行錯誤、ビジネススキルがあると心強いです。これらを学べる場所は、実は、営利企業にあるのです。特に若いころは理不尽な経験もたくさんするでしょう。企業の中で「困難な課題を乗り越えた」「1つの仕事をやりきった」経験は、本当にやりたい仕事を選ぶとき大きな力となってくれます。

 また、「社会に貢献することが大事で、お金は二の次」というように、お金を稼ぐことに嫌悪感を抱く人も多いようです。その分、活動の原資を助成金や補助金でまかなおうとする人もいます、

 私たちの周りにある社会的な課題は「ああすれば、こうなる」というほど簡単に解決できるものばかりではありません。助成金や補助金は時期が来れば終了します。それによって活動が停滞してしまうと、「社会が抱える課題を自分たちの力で解決する」という本来の目的がかなえられなくなってしまいます。社会貢献性の高い事業だからこそ、長く続けること。そのためには利益をきちんと出し、自分たちの力で回していく必要があります。利益を上げるビジネススキルやお金を稼ぐことへの健全なメンタリティは、ことのほか重要なのです。

 先行き不透明で不安が多い中、支援を受けられずに困っている人がたくさんいます。社会貢献性の高い事業はますます求められてくるでしょう。社会が抱える課題を解決し、人の役に立てている実感が得られる仕事は素晴らしく、思いを形にしていくプロセスは本当に楽しい。そのためにも、社会起業を一時のブームで終わらせてはならないのです。

NPO法人しごとのみらい理事長 竹内義晴

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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