リーダーの資質とは?オーケストラ指揮者に学ぶマネジメント

高木善之さんの『地球大予測〈2〉オーケストラ指揮法』という本があります。

この本、タイトルは「オーケストラ指揮法」ですが、究極の「マネジメントの本」です。なぜなら、オーケストラは個性の強い100名前後の奏者の心を1つにまとめられてこそ、いい音楽ができるからです。

ビジネスパーソンも多いに参考になります。

地球大予測〈2〉オーケストラ指揮法

オーディションで起こった指揮者の悲劇とは?

高木さんは元々合唱団の指揮者。

しかし、「一度はオーケストラの指揮をしたい」と、オーケストラ指揮者のオーディションに出かけます。

オーディションでは、簡単な自己紹介と、曲に対する考えや説明を述べることになっていました。

オーディションが始まり、一人目の方は、「私は○○音楽大学……。この曲は全体としてウィーン風にとらえ最初はやや軽い目に、テンポもやや速く入りまして……」などなど、数分の説明をしたあとに、タクトを構えたのだそうです。

すると……一部のメンバーは楽器を構えたものの、すぐに楽器を下ろしてしまったのだそうです。

「最初からお願いします」
「お願いします。構えてください」

指揮者は動揺しながらもタクトを構えますが、誰も楽器を構えないメンバー。

そのような状況が2人目、3人目と続いたのだそうです。

はじめての指揮者に起こった奇跡

そして、高木さんの順番。

高木さんは元々合唱団の指揮者。さらに、工学部で物理学を専攻していたため自己紹介のしようがありません。「どうせ楽器も構えてくれないだろう」と思った高木さんは、自己紹介も説明もやめて、腹を決めていきなりタクトを構えました。

すると……なんと、全員が楽器を構えたのだそうです!

プロのオーケストラを前にタクトを振り、タクトや感情の通りに演奏してくれるメンバー。気持ちのいい時間を過ごし、気がつけばオーディションは終わり、無事合格。

なぜ、高木さんに奇跡が起こったのでしょうか?

指揮者に必要な6つの資質

多くの経験を積んだのち、オーケストラの指揮者として必要な資質はおよそ次のようなものだと、高木さんは言います。

  1. 楽器を専門的に演奏できる
  2. スコア(総譜:全体の流れが分かるように、各楽器全ての楽譜が1つに書かれている譜面)が読める
  3. ミスを聴き分けられる
  4. 絶対音感
  5. 音楽理論、音楽史、音楽解釈に精通していること
  6. 人間的魅力

1~5までは、音楽的なスキルです。

それに加えて、6の人間的魅力については次のようにおっしゃっています。

「コンピュータのように知識があり、メトロノームのように正確にリズムを刻んだとしても、人間的な魅力がない指揮者には、オーケストラのメンバーはついていかないでしょう。」

さらに、

「人間として学ぶところを持っている人、具体的にはやさしさ、暖かみ、包容力、寛大さ、前向きの姿勢、個性、夢を持っていることなではないかと思います。」

ビジネスパーソンに必要なリーダーの資質

これは、ビジネスパーソンにも全く同じことが言えるのではないでしょうか。

ビジネスの世界で「マネジメント」というと、目標管理や数値管理のような、何かを「管理するスキル」のようなイメージがあります。

もちろん、メンバーを管理するスキルも大切です。

しかし、目標や数値を管理するだけなら、メトロノームと同じ。

「人間として学ぶところを持っている人、具体的にはやさしさ、暖かみ、包容力、寛大さ、前向きの姿勢、個性、夢」

……こういったことを持ち合わせているからこそ、メンバーに「このリーダーと一緒に仕事がしたい!」と思ってもらえるのでしょうね。

参考:具体的なコミュニケーションスキルも

この本にはリーダーの資質だけではなく、具体的なコミュニケーションの手法(コーチング)も書かれていますので、ぜひ、参考になさってください。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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