人材不足と採用難を乗り越える:ミドルシニア層の知見を活かす重要性

しごとのみらいの竹内義晴です。

しごとのみらいでは、組織づくりやコミュニケーションに関する企業研修や講演を行っています。その際、人事や研修担当者と会話をする機会が多くあります。その中で近年、人口減少が加速する現代において、多くの企業から「人材不足と採用難に直面している」という声を非常に多く耳にするようになりました。特に、中小企業だけでなく大企業からも同様の声が聞かれることは、この問題が企業の規模を問わず、極めて深刻であることを示しています。

こうした状況を打破する新たな人材戦略として、近年注目されているのがミドルシニア層の知見を活かすことです。

近年「人生100年時代」と言われる中で、ミドルシニア世代が持つ豊富な経験やスキルを、企業の成長に活かすことの重要性が改めて見直されています。ミドルシニア層の知見を活かすことは、単に労働力を補うだけでなく、企業と個人の双方にとって新たな可能性を拓くものとなります。

ミドルシニアの活躍を阻む課題

しかし、多くの企業がミドルシニア層の活躍支援に踏み出せないでいるのも事実です。その背景には、企業側のノウハウ不足と、双方のマインドセットにおける課題が挙げられます。

パーソル総合研究所の調査「日本で働くミドルシニアを科学する」によれば、過去10年間でミドルシニア世代へのキャリア支援研修の実施率はわずか6.7%に過ぎません。多くの企業が、そもそも、ミドルシニア世代の活躍に価値を見出していない。仮に、価値を見出したいと思っていたとしても、何をどうすれば良いかわからないという状況にあることが推測されます。

また、ミドルシニア世代を支援する人事担当者が、対象者より若い世代であることも少なくありません。そのため、ミドルシニアの心情やキャリア観を理解することが難しく、効果的な支援ができないという課題も存在します。

企業と個人のマインドセットをアップデートする

長年の慣習として、50代で役職定年を迎え、60歳で定年、その後は再雇用という働き方が一般的でした。そのため、企業は「会社を去る人材」としてミドルシニア層に投資する意識が低く、本人たちも「もう引退だから」というマインドセットになりがちでした。

しかし、人材不足がさらに深刻になるこれからは、ミドルシニア世代に対して、企業と個人の意識をアップデートすることが不可欠です。ミドルシニア層が持つ知見は、加齢による体力的な変化を補って余りあるものです。企業は彼らを「戦力外」と捉えるのではなく、経験と知識を持つ「貴重な人材」として再評価する必要があります。

また、ミドルシニア層自身も、「引退」という意識ではなく、年齢に関わらず自分の強みを活かし、周囲からも信頼されるためにも、「自分はこれからも活躍できる」「貢献できる」といったマインドセットを持ち続けたいものです。

組織に活きるリスキリングのあり方

人材不足を解決するために、政府は資格取得などを支援しています。特に、これからの社会に必要となるデジタル分野へのシフトを推進しています。

しかし、全く新しい分野の知識をゼロから習得するのは年代に関わらず難しいものです。また、仮に資格を取得しても、それを実際の業務に活かしきれないという課題も多く見られます。企業にとっても、リスキリングに投資したにも関わらず、資格を取っただけにとどまってしまい、個人にとってもモチベーションを維持することが難しい状況があります。

組織の中でミドルシニア層を活かす有効なリスキリングとは、単に新たなスキルをゼロから習得するのではなく、彼らの業務経験や知識を活かし、新たな価値を生み出すこと。「これまでの経験を活かせるようなリスキリング」の視点が重要です。

以下に、そのためのポイントを記します。

1. スキルだけではなく、人柄や人間関係の構築力を活かす

ミドルシニア層の強みは、長年の経験で培われたコミュニケーション力、交渉力、そして周囲との信頼関係を築く力にあります。これらはスキルとして言語化しにくいものですが、仕事を進める上で不可欠な資産です。自己分析を通じて、これらの強みを再認識することが有効です。

2. 経験を土台にしたリスキリング

いままでの経験が活かせないような知識をゼロから学ぶのではなく、既存の経験や知識を活かしながら、周囲に必要とされるツールや技術を習得することが重要です。

例えば、人口減少がさらに進むこれからの社会では、少ない人数で仕事ができるよう、デジタル化により生産性を高める必要があります。近年は、高度なプログラミングの知識がなくても、業務改善に必要なアプリケーションを自分たちでつくることができるローコード、ノーコードツールが提供されていますが、こうしたツールを使う際に重要なのは、高度なITスキルよりも、むしろ豊富な業務経験や業務を分析する問題解決能力です。これらは業務経験が豊富なミドルシニア世代の強みです。

業務に精通したベテランが、デジタルツールを使いこなすことで、組織の課題を自律的に解決できることを証明しています。たとえば、「kintoneおばちゃん、65歳の転職について語る」は、定年間際だった女性がノーコード・ローコードツールを用いて、新たな活躍の場を見出した事例です。

人口減少社会における企業の新たな人材戦略

人生100年時代、50代、60代はまだ能力を十分に発揮し、活躍できる年齢です。ミドルシニア層を「戦力外」や「福祉雇用」と捉える従来の捉え方を見直し、彼らを企業の発展に不可欠な貴重な人材として再定義することが大切です。

彼らの潜在能力を最大限に引き出すことは、人材不足を乗り越えるだけでなく、組織全体の活力を高め、企業の持続的な成長を可能にするでしょう。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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