NLPとコーチング―2つの共通点と5つの違い

もし、あなたがコーチングを学んでいたら、「クライアントを上手くリードできない」ことにお悩みではありませんか?コーチングの資格は取った。けれども、いざセッションが始まると、何を質問したらいいのかよくわからない……というご経験をお持ちかもしれません。ひょっとしたら、「もっとスキルを身につけなきゃ」と思われているかもしれません。

NLPから学んだ方もそうです。講座に通っていたころは楽しかった。それ自体は満足している。けれども、いざ、クライアントに関わるとうまくリードできないのですよね。「どうしたら、NLPを生かせるのだろう……」と、お悩みかもしれません。

そこで、いろいろ調べてみた結果、コーチングから学んだ方は「NLPがいいらしい」、NLPから学んだ方は「コーチングがいいらしい」という情報にたどりついたのではないでしょうか。そして、「NLPも学んでみようかな」「コーチングも学ばなきゃダメかな」「そもそも、何が違うのだろう?」と思われているかもしれません。

筆者はコーチングとNLPをほぼ同時期に勉強したタイプです。現在はNLPのトレーナーをしています。そのため、コーチングから勉強した方からは「NLPも勉強したほうがいいか」、NLPから勉強した方からは「コーチングも勉強したほうがいいか」という質問を何度も受けたことがあります。

現場で実践していく中で、コーチングとNLPの共通点や違いがわかってきました。そこで、コーチングとNLPの共通点と違いについてまとめてみました。どちらから学ぶか、何を学ぶかを判断する一つにしていただければ幸いです。

コーチングとNLPの2つの共通点

コーチングとNLPの共通点は、主に2つあります。

1、スキルを使う目的は同じ

コーチングもNLPも、スキルを使う目的は同じです。

たとえば、次のようなものが挙げられます。

  •  能力を引き出す
  •  気づきを促す
  •  自立性や自発性を促す
  •  選択肢を増やす

大切な人が自身の力で問題を解決し、ゴールを達成する。そのプロセスの中で成長を実感できるよう支援するのがコーチングであり、NLPです。

2、基本的なコミュニケーションスキルは同じ

コーチングもNLPも、大切な人との関わりで使う、基本的なコミュニケーションスキルは同じです。

たとえば……

  •  相手の状況を観察するスキル
  •  信頼関係を作るスキル
  •  傾聴するスキル
  •  相手に問いかけ、質問し、気づきを促すスキル
  •  必要に応じてリードしたり、提案したりするスキル

など。

コーチングとNLPの5つの違い

続いて、コーチングとNLPの違いについて挙げてみました。

1、成り立ちが違う―目標達成がコーチング、問題解決がNLP

コーチングとNLPは、その成り立ちが違います。

コーチングの語源は、お客さまを目的地に物理的に運ぶ「coach(馬車)」にあります。その比喩から、「クライアントをゴールに運ぶ」人のことをコーチといいますが、その成り立ちは「目標達成」です。

NLPは、優れた成果を出す3人のセラピストが使う言葉や関わり方を体系化したものです。ここからも分かるように、その成り立ちは「問題解決」です。その後、NLPの手法はセラピーに限らず、「目標達成」にも効果的であったことから、ビジネスやスポーツ、教育等、さまざまな分野で活用されるようになりました。

2、扱う範囲が違う―ポジティブなコーチング、ポジティブ&ネガティブなNLP

コーチングとNLPは、扱う範囲が違います。

先の「成り立ち」でお話したように、コーチングはどちらかといえばポジティブな目標達成を得意とし、ネガティブな問題解決はあまり得意としません。

NLPはセラピーが始まりのため、ネガティブな問題解決から、それを超えてポジティブな目標達成までを扱うことができます。

3、得意なツールが違う―左脳的なコーチング、右脳的なNLP

コーチングとNLPは、得意なコミュニケーションツールが違います。

コーチングは言葉や思考、論理性を大切にします。そういう意味では左脳的です。傾聴や質問など、言葉で関わっていきながら、思考を促すのが中心です。

NLPはイメージや五感、感情を大切にします。そういう意味では右脳的です。過去や未来をイメージすることで柔軟に発想し、そのとき味わう身体感覚や感情から、新しいアイデアやヒントを引き出します。

以前、コーチの方をNLPのアプローチを使ってコーチングしたとき、次のような声をいただいたことがあります。

私が体験したNLPコーチングは、脳の奥に隠れていたものを、
突然認識することができた、という感じです。
そのイメージが思い浮かんだ理由はわかりません。
ただ、現実的な未来として私の中で具体化されたことと、
それに向けて、やる気まんまんの自分がいます。
結構、衝撃的な出来事でした。。。。

研修講師・コーチ 女性

この姿勢は、テキストにもよく現れているように感じます。私が受けたコーチ・エイ(当時はコーチ21)のプログラムでは、コーチングのテキストは10センチ以上あります(写真下)。一方、NLPのテキストは2センチありません(写真上)。

コーチングは知識として理解する左脳派であるのに対し、NLPは体験することで身体感覚として理解する右脳派です。

4、会話の流れが違う―ロジカルな流れ重視のコーチング、柔軟性重視のNLP

コーチングとNLPは、大切な人をガイドする「会話の流れ」が違います。

コーチングのトレーニングでは、「流れ」を大切にしています。「流れ」とは、「最初にテーマを聞いて」「次に、ゴールイメージを聞いて」「それから、現状を明らかにして」「ゴールと現状のギャップを明確にして」「今、何ができるかを考える」ような、ロジカルな「会話の流れ」です。

図で示すと、次のようなものです。

一方、NLPには、基本的な「会話の流れ」があまりありません。その場における柔軟性を大切にしています。

5、学ぶ範囲が違う―ビジネス全般を扱うコーチング、コミュニケーション中心のNLP

コーチングとNLPは、学ぶ範囲が違います。

コーチングはビジネス全般を扱います。私が受けたコーチ・エイ(当時はコーチ21)のプログラムでは、トレーニングの中にマネジメントやマーケティング、効果的なチーム作り、リーダーシップ、セールスコーチングなどが含まれていました。全教程を終了するのに1年半(最短で1年ほどだそうです)掛かりました。

NLPはコミュニケーションが中心です。言葉やイメージ力を使ってネガティブな感情を解決したり、行動の制限となっている思い込みをゆるめたり、ゴールイメージを明確にしてそのうれしさを身体感覚で暑かったりと、大切な人の成長をコミュニケーションで解決することに焦点を当てています。それ以外のビジネス的な要素は教程にありません。

両方のいいところを活用するスタンスで

コーチングとNLPの共通点や違いについてまとめてみました。スキルを教える団体によっても違うと思いますが、筆者が体験してきた範囲でまとめました。

インターネットの情報の中には、「コーチング vs NLP」や、「どっちが優れているか/優れていないか」という情報が多いように感じます。また、「NLPの一部がコーチング」という説明も見かけましたが、そもそも成り立ちが異なるので、重なり合う部分と、そうではない部分があるように思います。

私が経験してきた限りでは、「共通している部分もあるし、違う部分もある」という印象です。コーチングはビジネス全般から入り、その中でコミュニケーションに視点をおいていくのにたいし、NLPはコミュニケーションから入り、ビジネスをはじめ、さまざまな分野に視点を広げていく印象です。

大切な人との関わりで大切なのは、ツールそのものよりも、相手の「問題を解決すること」「ゴールを達成すること」です。「いいものは取り入れる」姿勢と柔軟さが大切なのではないかと思います。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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