コミュニケーションで最も大切な「ラポール(信頼関係)」の築き方
コミュニケーションで最も大切なことがあります。それは「信頼関係」です。なぜなら、信頼関係がなければ相手は心を開いてくれず、お互いのことが分かり合えないからです。
逆に、信頼関係があれば、相手と心が通じ合い、よりよい関係が生まれます。できることなら、できるだけ早く、相手と信頼関係を作りたいものですね。
では、どのようにしたら信頼関係を築くことができるのでしょうか。
信頼関係の2つの種類
「信頼関係」を辞書で調べてみると、「相互に相手のことを信頼し合っている関係」「信頼することができるような関係」などの意味がありますが、一言で「信頼関係」と言っても、実は、2つの種類があるのをご存知でしょうか?
2つの種類とは、「長い時間をかけて築かれる信頼関係」と「短い時間でも築かれる信頼関係」です。
長い時間をかけて築かれる信頼関係
一般的な「信頼関係」という言葉には、「それなりの時間が必要」というイメージがあります。なぜなら、相手と信頼関係を築くためには、相手のことを理解し、分かり合っている必要があるからです。相手の意見や考え方を深く知ったり、同じ体験や苦労を重ねる必要があるため、それなりの時間が必要なのです。
長い時間をかけて築かれる……これが、1つ目の信頼関係です。
短い時間でも築かれる信頼関係
一方、信頼関係には短い時間で築かれるものもあります。たとえば、初めて会った人でも、大して言葉を交わしてはいないのに、「この人とは何となく話が合いそう」「この人とは何となくうまが合いそう」と感じることは、実際によくあることです。
短い時間でも築かれる……これが、2つ目の信頼関係です。
信頼(trust)とラポール(rapport)
信頼のことを英語では「trust」と言います。長い時間をかけて築かれる信頼関係は「trust」です。日本語が持つ信頼関係のイメージはこれです。
一方、仏語や英語には、相手と親密な信頼関係にあることを示す「rapport(ラポール)」という単語もあります。「rapport」は、人と人との間がなごやかで、心が通じ合った状態であることを指す、心理学用語としても使われている単語です。短い時間で築かれることがある信頼関係が「rapport」です。
「trust」と「rapport」はどちらも大切ですが、そもそも出会って間もない関係では「trust」はありません。そこで、まずは、相手と心が通じ合った関係、つまり、ラポールを築くことが大切になってきます。言い方を変えると、「rapport」が築かれたからこそ、「trust」が築かれる準備ができると言ってもいいでしょう。
ラポールの築き方
ラポールの築き方はとてもシンプルです。そのポイントは、相手と「合わせる」こと。
たとえば、初めて会った人でも、出身や趣味が同じだと分かった瞬間、「バチッ」っと何かが合った感じが生まれ、会話に花が咲くことがあります。言葉づかい(方言や業界用語)などもそうですね。洋服のセンスもそうです。
どうやら人は、相手と何かしら「合っている」状態のときに、「この人とは何となく気が合いそう」と感じるようです。逆に、自分とは全く異なる感じの人とは、「何となく合わなそう」という感じがします。
それならば、「合わせる」を意識的に行えば、相手と心が通じ合った関係が築けそうです。
ちなみに、この「合わせる」のことを、心理学用語では「マッチング」、それを続ける(ペースを合わせる)ことを「ペーシング」と呼んでいます。
ラポールを築くためのポイント
ラポールを築くための「合わせる」いくつかのポイントを紹介しましょう。
- 顔の表情、視線
- 声のトーン、リズム、テンポ、大きさ
- 姿勢、体の動き、しぐさ
- 呼吸
- 相手がよく使う言葉の言い回し、感情言葉
相手と、体験や会話の内容、場や空間を共有するようにすると、ラポールが築きやすくなります。
たとえば、次のような行動は相手とのラポールを切ってしまいます。
- 会話の途中に携帯電話やスマートフォンを手にする
- 時計を見る
- 口では「はい」と言いながら、態度は興味がなさそうにする
- テレビやパソコンのモニタを見ながら話を聞く
次のような行動は、相手とのラポールを築きます。
- 相手が笑顔なら、こちらも笑顔に、真剣な面持ちなら、こちらもそのように
- 相手と体の向きや姿勢(自分が座っていたら相手にも座るよう促す、立っていたらこちらも立つなど)を合わせる
- 相手が「緊張しているな」と感じたら、「緊張しますね」のように伝える
- 服装は、場の雰囲気に合わせてチョイス
- 相手や周りの環境を見回して、自分も興味を持っているものを言葉にしてみる
など。
効果は「スキル×気持ち」
ラポールはコミュニケーションのスキルです。効果を最大限にするためには
効果 = スキル × 気持ち
という方程式があります。気持ちがゼロだと効果はゼロ。気持ちがマイナスだと効果はマイナスです。「相手といい関係を作りたい」という気持ちを持って接することで、相手とよりよい関係を築くことができるでしょう。
投稿者プロフィール
- 1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。
最新の投稿
- お知らせ2024年11月26日青森中央学院大学「これからの青森ワーケーションを考える-vol.2-」に登壇します
- メディア2024年11月26日「Speakers.jp」に掲載されました
- メディア2024年11月20日エンジニアにとっての「リスキリング」とは何か?──@IT自分戦略研究所の連載に記事が掲載されました
- お知らせ2024年11月11日専門学校・大学講師のお悩み解決サイト「ウイナレッジ」で、連載3回目の記事が公開されました
メールマガジン
MAIL MAGAZINE
メールマガジンをお読みになりませんか?
コミュニケーションやチームづくり、自分との関わり方、これからの働き方など、「楽しくはたらく」ヒントをお送りしています。