「世代間ギャップ研修」の目的が変化? コミュニケーションから人材不足対策へ

しごとのみらいの竹内義晴です。

近年、企業が世代間ギャップ研修を行う目的が大きく変わってきていることをご存知でしょうか。かつては、世代間のコミュニケーションを円滑にすることが主な目的でした。しかし今、多くの企業が抱える「人材不足」という深刻な課題を解決するための重要な手段として、この研修が捉えられ始めています。

『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本を出版してから、世代間ギャップに関する講演依頼が増えました。その依頼の多くは「若手世代とベテラン世代の価値観の違いによって、コミュニケーションに問題が生じている」というものでした。実際、以前はそうした依頼がほとんどだったのです。

しかし、ここ1年ほどで、講演依頼の背景が変わってきています。それは、2024年の日本の人口減少数が約90万人に達するなど、人口減少に伴う人材不足が深刻化しているからです。これは、和歌山県の人口とほぼ同じ規模です。

人口が減れば、当然、労働力人口も減少します。若い人材の採用が難しくなる中、大手企業が初任給を30万円台に乗せてくるなど、人材の獲得競争は激化しています。

こうした背景から、多くの企業の人事から聞こえてくるのは「若い人材が不足している。一方、ミドルシニア世代はたくさんいる。だから、ミドルシニアの社員にもっと活躍してほしい」という声です。

世代間ギャップが広がる要因

多様な世代が同じ職場で働くようになると、世代間ギャップが広がる恐れがあります。なぜなら、時代とともに労働環境や仕事に対する価値観が大きく変化してきたからです。

例えば、かつては「24時間働けますか?」というテレビCMがあったように、長時間労働が当たり前でした。しかし、今は働き方改革関連法案によって労働条件が厳しく制約されています。また、以前は問題とされにくかったハラスメントも、パワハラ防止法によって、事業主に対策を講じることが義務化されました。

このように、育ってきた労働環境が異なるため、世代によって価値観が違うのは当然のことです。同じ職場で働く世代が広がるほど、価値観の違いによるギャップは拡大する方向に向かいます。

「前提のマインドセット」と「エイジズム」

さらに、ミドルシニア世代のこれまでの労働環境から生まれた「前提のマインドセット」が、世代間ギャップを広げることもあります。

「55歳で役職定年、60歳で定年退職」という仕組みが一般的だった時代では、「そこまで頑張れば、あとは引退」という意識が働きがちでした。そのため、ある程度年齢を重ねると「もう十分に頑張った」「あとは若い世代に任せればいいだろう」といった気持ちが芽生えます。

また、役職を離れた後も、関わり方に戸惑ったり、役職があった時と同じような振る舞いや言動をしてしまうケースも見られます。

一方、若い世代から見ると、「別に偉くないのに」「いつまで役職にしがみついているんだろう?」「同じ職場で働いているんだから、年齢に関わらず、ちゃんとやってよ」といった不満を抱く場合があります。

また、エイジズム(年齢による差別)の問題も無視できません。

かつて管理職だった人が役職定年で一般職になると、若い世代は「どのように関わったらいいのか分からない」と感じるかもしれません。また、無意識に「現役を退いた人」「もう成長できない人」といった年齢による差別的な意識が生まれてしまうこともあります。

これまでは65歳定年であれば、いずれ職場を去るため大きな問題にはなりませんでした。しかし、人材不足対策として定年延長が進み、多様な世代が同じ職場で長く働くようになると、こうした世代間ギャップはますます広がっていくでしょう。

良好な関係を築くために

人口減少が加速する中、人材不足は、今後どの企業でも直面する「決定事項」と言えます。そうした環境では、「〇〇世代は□□だから」のように、ある世代を一括りにするのではなく、一人ひとりが自覚を持って良好な関係を築いていくことが大切です。

そのために、まずは自分の意見を言う前に相手の考えをよく聞くこと。分からなければ質問する。何か伝えたいことがあったら、前向きな言葉で伝える。そうした基本的な姿勢が重要です。

組織全体としては、若い世代から見てミドルシニア世代が「頼りになる存在」「将来、〇〇さんのような年齢の重ね方をしたいな」と思えるような存在に。逆に、ミドルシニア世代から若い世代を見て「自分の意見をしっかり持っている、素敵な社員だな」と思えるような存在になることが理想です。

こうした一人ひとりのちょっとした意識と行動が、多様な世代が働きやすい職場を作っていくのです。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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