採用・離職に直結する「世代間ギャップ」地方から都市へ広がる企業の死活問題

しごとのみらいの竹内義晴です。
かつて地方特有の問題と思われていた人口減少は、今や都市部の企業をも揺るがす構造的な問題になっています。そして、この構造的な問題は、企業の根幹を揺るがす「世代間ギャップ」として顕在化しています。
本稿では、地方に拠点を置く私が肌で感じてきた人口減少のリアルな姿と、それがどのように企業における世代間ギャップの問題へと繋がっているのかを考察します。
人口減少の「震源地」、地方で始まった変化
しごとのみらいの竹内義晴です。
私が「しごとのみらい」を立ち上げた2010年、まだ今ほど少子高齢化や人手不足はメディアで騒がれていませんでした。しかし、新潟県妙高市という中山間地を拠点とする私にとって、漠然と「今後、人は減っていくのだろう」という課題感は常にありました。
そして近年、その課題感は「若い世代がいなくなり、高齢者が増えている」という現実として、より強く認識するようになりました。私が住む約50世帯の小さな集落では、かつて多くいた子どもの数は片手で足りるほどに減り、独居世帯の高齢者が増え続けています。この構造は近い将来、地方の企業にも大きな影響を与えるはずです。
2024年、日本の人口減少数は約90万人に達しました。これは、和歌山県の人口とほぼ同じです。一つの県がなくなるほどの勢いで日本の人口が減っているこの現実を、どれだけの人が自分ごととして捉えているでしょうか。
「日本の縮図」という言葉があります。日本全体が抱える問題が、もっとも脆弱な地方から表面化する様子を示す言葉です。現在、地方を中心に急速な少子高齢化が進んでいます。地方に住む私は、この日本の縮図として、今後日本社会が直面する構造的な問題を一足先に感じているのです。このままでは、地方は人がどんどん減り、多くの企業が人材不足によって立ち行かなくなり、地域全体が衰退してしまいます。これはもはや、個々の企業が努力するだけで解決できるような問題ではなく、社会全体の構造的な問題なのです。
都市部の企業でも顕在化する「構造的問題」
今まで地方の問題として語られることが多かった人口減少への危機感は、近年、都市部の企業でも同様に感じられるようになってきました。
私の本業は、組織づくりやコミュニケーションに関する企業研修や講演です。以前、都市部の大企業から「採用が難しくなってきている」という声を聞いた時は、耳を疑いました。都市部はむしろ、地方の人材をブラックホールのように吸い寄せる場所です。そんな場所でさえ、人材採用が困難になってきています。
講演先には行政機関も多くあります。以前は「安定した職業」として人気があり、募集をかければ定員以上の応募があり、そこから優秀な人材を選べたそうです。しかし、今では「定員すら集まらない」という話を耳にしています。安定しているはずの行政機関でさえ人材確保に苦慮している現状は、人口減少問題が想像以上に深刻であることを物語っています。
企業研修のテーマから見える人材の課題
人口減少への危機感は、企業研修の内容にも明確に現れています。
以前、組織づくりやコミュニケーションの研修といえば、「どうやって良好な関係を築くか」という内容がほとんどでした。拙著『Z世代・さとり世代の上司になったら読む本』を出版してからは、講演のテーマは主に世代間ギャップに関するものが多かったのです。
しかし、近年、その目的は「良好な関係を築く」だけではなくなってきています。たとえば、「人口減少社会となり、今後ますます多様な世代と働く上で」といった目的や、「人生100年時代を迎え、自分の強みを生かして働く上で」といった、より本質的なキャリアや組織のあり方に踏み込む内容が付加されるケースが増えてきました。
さらに、人事面の問題として、より直接的なテーマが提示されることもあります。近年「退職代行」や「静かな退職」といった言葉が話題になっています。上司とのコミュニケーションに問題があり、採用したばかりの若手社員が離職したり、辞めはしないものの「言われたことしかやらない」といった状況になったりするケースです。ただでさえ若手人材の採用が難しい時代に、コミュニケーションの問題で貴重な人材を失うことは、企業にとって大きな損失です。
労働供給制約社会を前に
リクルートワークス研究所の調査によれば、2040年には約1100万人の労働者が不足し、「生活を維持するために必要な労働力」さえ供給できなくなる「労働供給制約社会」になるとしています。
この人口減少社会において、「若手社員が採用できない」「採用してもすぐに辞めてしまう」「世代間ギャップにより関係性が悪い」といった人材の問題は、企業にとって死活問題です。世代間ギャップを単なる「コミュニケーションの問題」として片付けるのではなく、企業の存続を左右する経営課題として捉え直すことが、今こそ求められているのではないでしょうか。
投稿者プロフィール

- NPO法人しごとのみらい理事長
- 1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。






