「たとえ」で分かりやすく伝える「メタファー」とは

ビジネスシーンでは、意見を分かりやすく伝える必要がありますよね。また、直接的に伝えると抵抗感を抱くようなことを伝えなければならないこともあります。

このようなシーンで便利なのが「メタファー」です。

そこで、この記事では、メタファーとは何か、どのようにして使うのかについて紹介します。

メタファーとは

メタファーとは、たとえ話(比喩)のことです。ある物事に類似している、または、関係している他の物事を使って表現します。

例えば、「君は太陽のようだ」がそうです。相手は決して太陽ではありませんが、太陽に喩えることで、想像力を豊かにし、明るく、朗らかな様子を示すことができます。

また、理解を相手のイメージにゆだね、自由な解釈を育むことができます。

メタファーの種類と効果

メタファーには、「直喩」「隠喩」「擬人化」「引用」「寓話・逸話・物語」などの方法があります。

直喩

直喩は「~のように」「~かと思うほど」などを使う方法です。イメージを広げることができ、表現が豊かになります。

例えば、文例の「君はまるで太陽のようだ」は、直接的に「君は明るく朗らかだ」のように伝えることもできますが、太陽に喩えることで、暖かさや輝きなど、具体的なイメージとして表現できます。

文例

  • 「君はまるで太陽のようだ」
  • 「君は花のように美しい」
  • 「まるで海のように深い話だ」

隠喩

隠喩は「~のように」「~かと思うほど」などを使わない隠された喩えです。

直喩よりもはっきりとした表現になります。

文例

  • 「君は私の太陽だ」
  • 「君は私の花だ」
  • 「夜明け前が一番暗いと言います」

擬人化

擬人化は、人ではないものを人に喩える方法です。自身の体験を通じて、対象を理解できます。

文例

  • 「空が今にも泣き出しそう」
  • 「この車をすごくガソリンを食う」

引用

引用は、他の文献や偉人などの言葉を引用する方法です。相手に抵抗感なくメッセージを伝えることができます。

例えば、「もっと努力しなさい」と直接的に伝えると、中には抵抗感を持つ人もいますが、次の文例のように、権威のある人や、相手にとって大切な人の言葉を引用すると、抵抗感なくメッセージを伝えることができます。

文例

  • 「浅田真央ちゃんはこう言っているよ。『ひとつのことに打ち込んだ努力は報われると感じています』とね」
  • 「スティーブ・ジョブズはこう言っているよ。『ベストを尽くして失敗したら、ベストを尽くしたってことさ』とね」

寓話・逸話・物語

寓話や逸話、物語もメタファーの一つです。ストーリーの中に肯定的なメッセージを盛り込むことで、相手が自由な発想でメッセージを受け取ることができます。

文例

例えば、メーテルリンクの『青い鳥』は、2人兄妹のチルチルとミチルが、夢の中で過去や未来の国に幸福の象徴である青い鳥を探しに行く物語です。結末は、自分達に最も身近な、鳥籠の中に青い鳥がいたという話ですが、物語を通じて「大切なものは身近にある」というメッセージのように感じられます。

なお、物語から受け取るメッセージは人それぞれです。

メタファーを使う例

筆者は人前で講演したり、文章で伝えたりする機会が多いのですが、メタファーをよく使います。

例えば、「仕事で最も大切なのはコミュニケーションである」という話をしたいとしますよね。そのとき、次のような体験談をよく話します。

やや長いですが、お付き合いください。

私は以前、技術肌のプログラマーでした。プログラミングは好きでしたが、人と関わるのは面倒くさいと思っていました。けれども、30代になると「お前もそろそろ人をまとめる仕事をしろ」と言われるようになります。「ずっとエンジニアでいたい」と思っていた私は、転職することにしました。

けれども、転職先が最悪でした。威圧的な上司、ギスギスした職場でストレスを抱え、うつっぽくなってしまいました。そんな折、管理職をやらなければならなくなりました。

「自分すら上手く扱えないのに、管理職なんてできるわけがない」と思いました。しかし、管理職に適した年齢なのは私しかいません。そこで、管理職をしぶしぶ引き受けることにしたのです。

管理職になるにあたり、まわりの同僚には、「自分と同じ思いをしてほしくない。せっかくなら、楽しく働いてほしい」と思いました。けれども、その方法が分かりませんでした。

そこで、インターネットや本で情報を集めることにしました。すると、優れた経営者やリーダーは、コミュニケーションを大切にしていることに気付きました。そこで、コーチングや心理学を学ぶことにしたのです。

勉強したことを職場で実践してみました。最初からうまくいったわけではありませんでしたが、少しずつ、まわりの同僚に笑顔が増えてきました。自発的な人が増え、顧客からも評価されるようになりました。

この経験を通じて、私は思ったのです。「そうか、仕事で最も大切なのは、人と人との関わりなんだな」と。

このように、自身の体験談を話すとイメージが膨らみ、コミュニケーションの重要性がより伝わると思います。自身の体験談(つまり、物語)も「メタファー」の一つです。

メタファーを作る際のポイント

メタファーとは、間接的なメッセージです。まるで、絵本や物語を使って子供たちに大切なことを伝えるような気持ちで表現するといいでしょう。

次のように考えるのがポイントです。

  • 伝えたいメッセージを明確にする
  • 相手にとって役立つストーリー展開にする
  • ポジティブなストーリーにする

まとめ

「メタファーとは何か」について見てきました。

ビジネスシーンでは、意見を分かりやすく伝える必要があります。また、抵抗感を抱かないよう、ポジティブに伝える必要もあります。

これまで見てきたように、メタファーはたとえ話を使って間接的に伝えるため、イメージを広げ、表現が豊かにし、抵抗感なくメッセージを伝えることができます。おしゃれな印象にもなりますね、

朝礼などでメタファーを使えば、分かりやすく伝えることができ、一目置かれる存在になれるかもしれません。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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