支配型と支援型―時代背景にみる次世代リーダーシップとコーチング

「リーダーシップ」と言えば、「先頭に立ってチームをまとめる」というイメージがあります。そこに必要なのは、的確な判断力と陣頭指揮をとる力、そして、さまざまな困難を一人で耐え忍ぶ忍耐力、さらには、メンバーから慕われる人望……といったイメージでしょうか。

一方、「そういうのはちょっと苦手」という方もいらっしゃるでしょう。先頭に立つのはタイプではないし、まわりには自分より優秀な人がたくさんいる。できれば、みんなの力を借りたい。他の人にリーダーをやってほしい……。けれども、年齢や立場で、そうも言っていられない実情があります。

もし、「先頭に立つリーダーシップ」(ここでは、支配型リーダーシップと呼ぶことにしましょう)が苦手でも、別の方法があることを知っていれば、それほど気負うことなく、リーダーの仕事ができるかもしれません。その方法は、「支配型リーダーシップ」に対して、「支援型リーダーシップ」と名づけましょう。

ここからは、支配型と支援型の双方を比較し、時代背景もかんがみながら、次世代のリーダーシップについて考えます。

支配型リーダーシップと支援型リーダーシップ

まず、支配型リーダーシップと支援型リーダーシップの違いをまとめてみました。

支配型

  • ピラミッド型
  • トップダウン
  • 指示が命令的
  • 一方通行
  • 施策は一人で考える
  • 力でグイグイひっぱるイメージ

支援型

  • フラット型
  • 横展開
  • メンバーの意見を引き出し、とりまとめる
  • インタラクティブ(双方向)
  • 施策はみんなで考える
  • 後ろからそっと押すイメージ

それぞれのリーダーシップに必要な能力

続いて、それぞれのリーダーシップには、主にどのような能力が必要なのかをまとめてみました。

支配型

  • 仕事を指示できるだけの業務知識、スキル
  • 的確な判断力
  • 先頭に立って指揮する強さ
  • 指示を的確に、分かりやすく伝えるための伝達力
  • さまざまな困難を一人で耐え忍ぶ忍耐力

支援型

  • メンバーが持っている強みを引き出す観察力
  • メンバーから意見を引き出すためのコーチング力(問いかけて、意見を引き出す力)
  • 出てきた意見をまとめるためのファシリテーション力(同意形成力)
  • 抱いている気持ち(ビジョンや不安や悩みなど)を話せる正直さ

時代背景と、これからのリーダーシップ

支配型リーダーシップと支援型リーダーシップは、どちらがいい/悪いというものではありません。支配型リーダーシップのほうがまとまりやすい場合もあれば、支援型リーダーシップのほうがまとまりやすい場合もあります。

一方、現在の時代背景や、世代感を考えると、これからは支援型リーダーシップのほうがチームとしてもまとまりやすく、リーダーのストレスも少ない(というより、楽しくリーダー職ができる)のかもしれません。

その理由を挙げてみました。

多様な価値観を持っているメンバー

マイナビウーマンの【保存版】「○○世代」「新入社員タイプ名」いろいろまとめてみましたによれば、世代によって、次のような特徴があるそうです。現在の労働人口にあたる、しらけ世代からゆとり世代の特徴を抜粋して引用します。

●「しらけ世代」
⇒1950年代から1960年代前半に生まれた人
・クールで個人主義な傾向が強い。
・政治にはあまり興味がない。
・「無気力」「無関心」「無責任」といわれた。

●「バブル世代」
⇒1965年-1969年生まれの人
・消費に積極的である。
・コミュニケーション能力が高い。
・見えっ張りな反面、自分の評価にこだわりがち。
・「男らしさ」「女らしさ」を意識している。

●「氷河期世代」
⇒1970年-1982年生まれの人
・貯金をする。
・浪費に消極的。
・結婚、出産をあまり気にしない。

●「ゆとり世代」
・失敗を恐れがちである。
・叱られることに慣れていないためか「打たれ弱い」。
・非常に現実的な「リアリスト」である。
・ルールを順守する意識が高い。

出典:【保存版】「○○世代」「新入社員タイプ名」いろいろまとめてみました | マイナビウーマン

このように、世代によって多様な価値観を持っていることが分かります。価値観が多様であればあるほど、リーダーの「これに従え!」と指示命令するのは、難しそうです。

叱られ慣れていない若い世代

マイナビウーマンの記事にあるように、ゆとり世代は「叱られることに慣れていない」という特徴があります。

以前、40代の管理職から次のような相談を受けました。ITmediaに寄稿した記事より引用します。

「大きな声では言えないんですけどね。最近の若い人は弱いなあと思っているんですよ。竹内さんは今いくつですか? 42? 私の2つ下だから分かると思うんですけど、私たちが若いときは先輩からゴリゴリやられてきたじゃないですか。悔しい思いもたくさんしましたけど、チクショーと思って何とかやってきました。けれども、最近の若い人はちょっとキツく言うとすぐ落ち込んでしまって……。

昔は、私も先輩に『最近の若い奴は……』って言われてきましたけど、今では私もつい、そう言いたくなることがたくさんありましてね。それでも、若い人と一緒に仕事をしていかなければいけないから、どう接したらいいのか分からなくて……」

出典:「最近の若い人は……」と思ったら――世代間ギャップを埋める方法 | ITmeidaエンタープライズ

このようなメンバーが多い中、支援型のリーダーシップのほうがまとめやすいでしょう。

答えのない時代

現代は変化が激しい時代です。少し前まで正しかったことが、一瞬のうちに変化します。

このような状況で、リーダーがベストな解決策を一人で考え、指示し続けるのは、難しいことなのかもしれません。

支援型リーダーシップは、コーチング型の「問いかけて、引き出す」コミュニケーションによって、メンバーから意見を引き出します。メンバー一人ひとりが持つ知恵を引き出し、みんなで答えを考えます。リーダーが解決策を一人で考えなくても済みますし、多くの知恵の中から優れた意見が出てくるかもしれません。みんなで考えた答えなら、納得感もあるでしょう。

厳しさよりも楽しさ

社会全体が混沌とし、ギスギスしている今、さらなる厳しさも大切なのかもしれません。というより、「こういう時代だからこそ、乗り切る厳しさが必要なんだ」という意見もあるでしょう。

しかし、答えがない現代は、柔軟な発想が必要なのも事実でしょう。

柔軟な発想をするために必要なのは、厳しさよりも楽しさです。安心できるコミュニティの中で、自由に発言できること。意見をお互いに承認しあい、更なるアイデアへと高めていくこと……社会が混沌としているからこそ、仕事には「楽しさ」があってもいいのではないでしょうか。

まとめ

リーダーの仕事が好きな人もいますが、中には苦手な人もいます。けれども、他に適任者がいないために、リーダーを引き受けなければならない人もいるでしょう。

けれども、せっかくやるなら、みんなと一致団結して仕事がしたいし、結果も出したいと思いますよね。

もし、支配型リーダーシップが苦手でも、コーチング型のコミュニケーションで、メンバー一人ひとりの強みを引き出し、メンバーを一つにまとめながら、後ろからそっと背中を押す……先頭が立つのが苦手でも、支援型リーダーシップなら、それほどストレスがなく、むしろ楽しくリーダーの仕事ができるのではないでしょうか。

職場というコミュニティづくりが、次世代のリーダーシップなのかもしれません。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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