話を聞く効果を最大化する2つの傾聴技法と6つのポイント

上司、同僚、部下、顧客など、まわりの人との関係をよりよくするためには、コミュニケーションが重要だと、よく言われますよね。

コミュニケーションをよりよくするものの一つに、傾聴があります。傾聴というと、「話を聴くことでしょう?」くらいの印象かもしれません。それほど難しく考えなくても。実際、私たちは毎日、誰かしらの話を聞いていますよね。

その、何気ない「話を聞く」の中に、ほんの少しだけ意識するだけで、まわりとの信頼関係がよりよくなる方法があるのを、ご存知ですか?簡単・シンプルですが、プロのカウンセラーも使う、とても効果的な方法です。

そこで、この記事では、まわりとの信頼関係をよりよくするための、傾聴技法についてお話しましょう。

「繰り返す」―2つの傾聴技法

傾聴技法の基本は、とても簡単で、シンプルです。その方法は、相手の言葉を「繰り返す」こと。専門用語では「オウム返し」、コミュニケーション心理学NLPでは「バックトラック」と言います。

「繰り返し」技法には、大きく分けると「そのまま繰り返す」方法と、「要約して繰り返す」方法があります。

そのまま繰り返す

「そのまま繰り返す」は、相手の話の語尾やキーワードをそのまま繰り返す傾聴技法です。

Aさん:最近、今一つやる気が出ないんです

Bさん;やる気が出ないんだ

Aさん:仕事が忙しいのもあるんですけど、これが本当にやりたいことなのか、じっくり考える余裕がなくて……

Bさん:考える余裕がないんだ。そういうことってあるね

Aさん:本当はもっと前向きに仕事ができたらいいなと思うんですけどね

Bさん:なるほど、本当は前向き仕事がしたいんだね

「○○ということね」のように、語尾やキーワードを繰り返すことで、話の内容を確認するニュアンスになります。そのため、相手は「話を聞いてくれている」「わかってくれている」ように感じます。

また、言葉による相づちのようなニュアンスになるため、会話にリズムが生まれて、話しやすい雰囲気になります。

特に、「楽しい」「うれしい」「悲しい」「つらい」など、感情言葉を繰り返すと効果的です。一字一句同じである必要はありません。

要約して繰り返す

「要約して繰り返す」は、相手の話を要約して、「つまり、あなたの言いたいことは○○ですね?」のように確認する傾聴技法です

Aさん:実は……最近、今一つやる気が出ないんです。仕事が忙しいのもあるんですけど、これが本当にやりたいことなのか、じっくり考える余裕がなくて……。本当はもっと前向きに仕事ができたらいいなと思うんですけどね。それがなかなかできなくて……。

Bさん:なるほど、本当は前向きに仕事がしたいのに、それがなかなかできないんだね。

Aさん:そうなんです。それで……(次の話)

相手の話を要約し、「なるほど、○○ということね」「つまり、○○ということだよね」のように確認するニュアンスです。

要約して繰り返されることによって、相手は頭の中を改めて整理できるほか、「ちゃんと伝わっているな」と安心できます。

また、「つまり、こういうことでしょう?」のように確認されると、「そうなんです。それでね……」のように、次の話をするきっかけにもなり、会話をはずませる効果もあります。

さらに、相手の話を要約するためには、「この人は何を言いたいのだろう?」と、相手に意識を100%傾けて話を聴かなければできません。結果的に、相手の話をよく聴くことになります。

傾聴技法を使う際に意識したい6つのポイント

傾聴技法を使う際に次の点を意識すると、さらに効果的です。

相手を知ろうとする気持ち、寄り添う気持ちで

繰り返し技法は、簡単・シンプルであるがゆえに、注意しないと機械的になってしまう場合があります。

そこで、「この人が言いたいことは、一言でいうと何だろう?」のように、相手のことをよく知ろうとすると、機械的になるのを防ぐことができます。

また、一字一句同じにすると機械的に感じるので、「つまり、○○ということね」のように、自分の言葉で伝えるようにすると、自然な感じになります。

「聴く」に徹する(話の腰を折らない)

傾聴する際は、相手の話の腰を折らず、「聴く」に徹するようにしましょう。なぜなら、話を途中で区切られると、相手は、「話を聞いてくれない」という印象を持ってしまうからです。

たとえば、自分に似たような経験があると、「そうそう、分かるな~。私もそうだったんですよ。私の場合は……」のように、つい、自分の話をしてしまいがちです。

もし、自分の意見を言いたい場合は、相手の話をすべて聞いたあとで、「少し意見を言ってもいいかな?」のように同意を取ってからにするといいでしょう。「自分の意見は絶対に言ってはいけない」にすると、それがストレスになりますが、「最後に自分の意見を言ってもよい」としておくと、「聴くに徹する」ことができます。

とりあえず、すべて受け取る(批判、批評、アドバイスをしない)

相手の意見が自分と異なっても、とりあえず一度、すべてを受け取るようにしましょう。なぜなら、話の途中で、「だからダメなんだよ」と批判されたり、「それはレベルが低いね」と批評されたり、「それより、こっちのほうがいいんじゃない?」とアドバイスをされると、そこで話が止まってしまうからです。

「すべて受け取る」といっても、「すべて共感」する必要はありません(次項に記します)。「あなたは○○だと思っているのですね(私は別の意見を持っていますが……)」ぐらいの感じで大丈夫です。「とりあえず、話を聴くことに集中して、自分の意見はひとまず脇に置いておく」ぐらいな感覚でいるといいでしょう。

もし、アドバイスが必要な場合は、すべて受け取ったあとで、「そういう意見もあるね。こういう意見もどうかな?」のように、相手の意見を肯定した上で、自分の意見を言うといいでしょう。

無理に共感しなくていい

傾聴では、よく、「相手に共感しましょう」と言われますが、無理に共感する必要はありません。なぜなら、相手と同じ体験をしたことがなければ共感できませんし、相手がネガティブな状況に陥っているときほど、「分かるよ」と安易に言うと、「あなたに何が分かるの?」のように、反感を生んでしまうからです。コミュニケーション能力における「共感力」の本当の意味も参考にしてください。

傾聴技法の「そのまま繰り返す」「要約して繰り返す」は、無理に「共感しよう」としなくても、自然な形で「共感しているように感じさせる」効果があります。

笑顔、相づち、うなずきは積極的に

笑顔、相づち、うなづきは万能のコミュニケーションツールです。意識的に取り入れましょう。もし、話の雰囲気的に笑顔がふさわしくなかったら、表情や振る舞いは相手に合わせるといいでしょう。

心の中はニッコリと

話がどんな内容であれ、心の中はニッコリ、ゴキゲンでいましょう。こちらがいい状態でいると、相手もいい状態になります。

「話を聞く」効果を最大化させるシンプルなルール

「話を聞く」効果を最大化させるためには、シンプルなルールがあります。それは、「やり方(技法)」と、「あり方(心のありよう)」の両方を掛け合わせることです。

つまり……

「話を聞く」効果 = 「やり方(2つの傾聴技法)」 × 「あり方(意識したい6つのポイント)」

です。

たとえば、自動車は人を好きなところに連れて行ってくれる、とても便利な道具ですが、使い方を誤ると人を傷つけてしまいますよね。コミュニケーションスキルも同じです。傾聴技法と心のありようが一致したとき、効果は最大化できます。

基本はとてもシンプルです。ぜひ、実践して、まわりの人たちといい関係を築いてください。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

メールマガジン

MAIL MAGAZINE

メールマガジンをお読みになりませんか?

コミュニケーションやチームづくり、自分との関わり方、これからの働き方など、「楽しくはたらく」ヒントをお送りしています。