プロも実践!簡単で効果的なコーチング10の質問リスト

「コーチングは難しい」と感じたこと、ありませんか?

信頼関係の構築、傾聴、質問……たくさんのスキルがあって、何をどのように実践したらいいのか分からない……そんなお話を、よく見聞きします。筆者もコーチングを勉強したとき、似たような体験をしました。

すべてのスキルを身につけることも、大切なことかもしれません。一方、職場で実践するなら、もっと気軽に始められたらいいと思いませんか?「コーチング」はできなくても、「コーチング的」なことができたら、最初の取っ掛かりとしては十分なのではないでしょうか。必要があれば、さらに拡げていけばいいわけですし。

ここでいう、「コーチング的」とは、たった一言のシンプルな言葉ながら、話を具体的にしたり、考えるきっかけを作ったり、思い込みをゆるめたりすることができる質問のこと。筆者も現場で使っている、簡単、しかも、効果的な質問リストをご用意しました。あなたの職場で、ぜひ、実践してみてください。

話を深堀する―「それで?」「それから?」

話を深堀するには、「それで?」「それから?」が便利です。もっと簡単にすれば「で?」。

  • 「なるほど、○○ということですね。それで?」
  • 「つまり、○○ということですよね。それから?」

具体化する―「たとえば?」「具体的には?」「詳しく教えていただけますか?」

人は、頭の中で考えていることをすべて言葉にできない特徴があります。相手と意思疎通するためには、具体的に聞きだす必要があります。話を具体的にするには、5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように?)が有名ですが、もっと簡単に、「たとえば?」「具体的には?」「詳しく教えていただけますか?」が便利です。

  • 「○○ということですが、たとえば?」
  • 「○○というごとですが、具体的には?」
  • 「○○というごとですが、もう少し詳しく教えていただけますか?」

仮定する―「もし、それができたら……」

人は、物事がうまく行かないとき、「○○は(自分に)できるはずがない」のように、自分に制限をかけてしまいます。仮定を使うことで、その制限を越えることができます。

  • 「私にはできるはずがありません」
    →「もし、それができたらどうなる?」

制限を拡げる―「あえて……すると?」

人は、はじめてのことや、思考の範囲に行き着いた(名案が浮かばない)ときなど、「もう、これ以上分からない」という状況になりがちです。そのようなときは、「あえて……すると?」と使うと、制限を拡げることができます。

  • 「解決策を考えてみましたが、よく分かりません」
    →「どんなことでもかまわないんだけど、あえてあげるとしたら、何かある?」

意識を未来に向ける―「どうすればできる?」

人は、物事に失敗すると、「何で失敗してしまったんだろう……」のように、意識が過去の問題点に向き、ネガティブになりがちです。「どうすれば?」を使うと、意識を未来に向けることができます。

  • 「あ~あ、何で失敗しちゃったんだろう……」
    →「どうすれば、この失敗を活かせるだろう?」
    →「どうすれば、この問題を解決できる?」

数値化―「今、どのぐらい?」

「数値化」は、理想像に対する相手の現状を把握し、理想像に近づけるためにどのような行動が必要なのかを洗い出すことができます。

  • 「理想的な状態が10点満点だとしたら、今、どのぐらい?」
  • 「1上げるとしたら、何が必要?」

未来を連想させる―「それによって、どうなる?」

「それによって、どうなる?」という質問は、未来を連想させます。ポジティブなシーンで使うと、行動に対する意味や価値を引き出し、ネガティブなシーンで使うと、リスクの回避に役立ちます。

  • 「今度、○○のシステムを導入しようと思っています」
    →「そのシステムが導入されると、どうなるの?」
  • 「現状、○○のトラブルが発生しています」
    →「その状況が続くと、どうなる?」

客観的にする―「何が(あなたに)そう思わせるの?」

人は、ネガティブな状況になっているとき、「私は、○○が嫌だ」「私は、○○が問題だと思う」のように、主観的(自分ひとりのものの見方・感じ方)になりがちです。「何が(あなたに)そう思わせるの?」という質問は、主観的な状態から客観的な状態に導くことができます。自分自身を冷静に見つめる効果があります。

  • 「あの人は本当に嫌だ」
    →「何が、あなたに、“嫌だ”と思わせるの?」
  • 「私にはできるはずがありません」
    →「何が、あなたに“できない”と思わせるの?」

本音を聞く―「本当はどうしたかったの?」「本当はどうしたいの?」

ビジネスシーンは、「本音と建前」で物事を処理していることが多いです。本音よりも建前が勝っている場合、行動的でなかったり、感情的になったり、精神的に負荷をかけたりしている場合があります。「本当はどうしたかったの?」は、相手に寄り添いつつ、相手の本音を引き出します。分かってくれる人が一人でもいれば、精神的に安心・安定します。

  • 「○○さんは私のこと、全然分かってくれないんです」
    →「本当はどうしたかったの?」

思い込みをゆるめる―「誰が言ったの?」「絶対?」「いつも?」「一度もない?」

すべての人が、さまざまな思い込みを持っています。しかし、「私にはそんな才能はない」「自分には絶対できるはずがない」など、「すべてがそうである」のような一般化された思い込みは、行動を制限してしまいます。このような場合は、「誰が言ったの?」「絶対?」「いつもそうなの?」のような、対象を具体的にする質問が効果的です。思い込みをゆるめる効果があります。

  • 「こんな初めての仕事、私には絶対にできません」
    →「誰がそんなひどいこと行ったの?」
    →「初めてのことはいつもうまく行かないの?」
    →「初めてのことでも、一度ぐらいうまくいったことはない?」

まとめ

職場でもすぐに使えそうな、10の質問を書き出してみました。いかがでしたでしょうか。

コーチングには、信頼関係構築や傾聴、質問など、確かに、あったほうがよいスキルがたくさんあります。けれども、コーチングとは、「考えるきっかけを作ればいい」だけなので、たった一言の質問でもいいわけです。

また、コーチングは「質問のスキル」と言われることが多いですが、逆に、質問を強く意識しすぎてしまうと、「何で?」「どうして?」と問い詰めてしまったり、「○○さん、これはどうしたらいいでしょうか?」という部下に、「あなたはどう思うの?」と質問返しをしてしまったりしがちです。

大切なのは、職場で実践できることです。無理にポジティブにしたり、目標を抱かせる必要はありません。あまり難しく考えずに、まずは、簡単なところからはじめてみてください。話の流れの中で、一言、相手に問いかけて、「あ、考えてくれているな」「答えてくれたな」と思えれば、それでOKです。

本来、コーチングはシンプルです。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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