社員が自発的にならない理由と自発性を育てる2つの方法

ビジネスシーンではよく、「自発性が大切」と言われます。もし、あなたが人事や管理職なら、「社員には、もっと自発的になってほしい」と思われているのではないでしょうか。

指示待ち社員が多いと、管理職やリーダー層の負担が大きくなってしまいますし、時代の流れが早い今の時代に会社を成長させるためには、社員から寄せられる「こうしたら、もっとよりよくなるのではないか」というような自発的な新しいアイデアや発想が要です。

そこで、この記事では、自発性とは何かに触れ、自発性に必要な要素から、社員の自発性を育てる方法について見ていきます。

自発性とは?

ところで、自発性とはどのような意味があるのでしょうか。goo辞書によれば……

他からの影響・強制などではなく、自己の内部の原因によって行われること。「自発性を損なう」

出典:自発性 | goo辞書

とありました。

また、weblio対義語反対語辞典によれば、「自発的」の対義語は「強制的」なのだそうです。

つまり、自発性とは指示や命令などの強制ではない、「自己の内部の原因によって」生じる考えや行動ということができるでしょう。

一方、ビジネスシーンではどうでしょうか。よく、上司が部下に自発性を持ってほしいとき「もっと自発的になりなさい」と言います。けれども、これは自発性を促しているように見えて、これ自体が指示や命令なので、自発性を育てていることにはなりません。

自発性に必要な要素

では、自発性が生まれるためにはどのような要素が必要なのでしょうか。

社団法人 電子情報通信学会の自発性に関する調査にプログラミング実習時の学習者の感情に着目した自発性測定手法の検討という面白いデータがあります。

この調査では、「プログラミング実習において,教授者は限られた実習期間内で教育効果を上げるために学習者の自発性を高める必要がある」としています。一方、自発性が生まれるメカニズムはプログラミングに限らずビジネスシーンも同じはずです。

この調査では、自発性の一因として感情に着目し、どのような感情が生じたときに、自発性が高まったかを測定しました。その結果、「もっと知りたい」「おもしろそう」「高い評価を目指す」「改良しよう」「コードが見たい」(※筆者注:「コード」とは、プログラミング言語で書かれたプログラムのこと)「もっとしたい」の6つの感情が影響していたいいます。

一方、自発性がないことに関連する感情に「難しい」「難しそう」「友達に相談しよう」という3つの感情が影響していたとしています。

さらに、この調査では「成績の高さと自発性の高さに関連があることがわかった」としています。つまり、自発性が生まれる感情を抱くことができれば、成績もよくなる(ビジネスシーンならば、仕事の成果が上がる)と言えます。

社員の自発性を育てるためには?

自発性を生じさせる「もっと知りたい」「おもしろそう」「高い評価を目指す」「改良しよう」「コードが見たい」「もっとしたい」といった感情は、「興味や関心」「評価」にまとめることができます。

そこで、社員の自発性を高めるためには、仕事の中に次の2つがあるかをチェックするとよいでしょう。

社員が仕事に興味や関心を持てる要素があるか

ビジネスシーンでは、「仕事とはそもそも大変なんだ」「困難を乗り越えるのが仕事なんだ」のように「難しそう」というイメージを与える言葉を使うことが多いのではないでしょうか。けれども、「難しい」「難しそう」「上司や同僚に相談しよう」という要素は自発性につながりません。

そこで、社員が仕事に、「もっと知りたい」「おもしろそう」「改良しよう」「中身が知りたい」「もっとしたい」という感情を抱く要素がチェックしましょう。

物事に対してどのようや興味や関心を抱くかは人それぞれです。同じ物事を見ても、興味や関心を抱く社員と抱かない社員もいるでしょう。その場合は、「これはすごくおもしろいんだよ」「実は、この中身がポイントなんだ」のように、興味や関心を誘うような情報を提供してみるのもいいでしょう。

また、「この仕事に改良点はないかな?」「もっとよくするためにはどうすればいいと思う?」のように、仕事に興味や関心が向くように問いかけるのもいい方法です(相手に問いかけ、考えるきっかけを作る方法を、コーチング的アプローチと言います)。

高い評価を目指せる仕組み

「高い評価を目指す」を一言で言えば、「〇〇をすれば、〇〇になれる」ということです。社員が仕事に、高い評価を目指せる仕組みがあるか、チェックしてみてください。

「高い評価を目指す」からイメージするのは、「目標」かもしれません。けれども、自発性に影響を与えているのは感情です。「上司から褒められる」「承認される」「仕事を評価される」「〇〇さんのようになれる」など、「期待」や「憧れ」のような言葉のほうが感情的と言えるでしょう。

まとめ

自発性に必要な要素から、社員の自発性を育てる方法について見てきました。

自発性とは、「持つ」というよりも、その人の内部にある、何かしらの心の琴線に触れたときに、興味や関心の感情が生まれた結果です。自発性の根源は感情なのです。

「自発的になりなさい」のように、行動を指示するのではなく、社員の感情にフォーカスすることによって、「どうすれば、自発的になるのか」が見えてきます。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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