コーチングのスキルアップに必須「会話の流れ」の重要性

コーチングは、人材を育成するコミュニケーションスキルの1つとして知られています。管理職の企業研修に取り入れている企業も多いようです。中には、仕事におけるコミュニケーション力の重要性に気づき、自発的に勉強している方も少なくありません。

一方、コーチングスキルのトレーニングを受けたのに、職場で上手く生かせないとお悩みではありませんか。筆者も、コーチングスキルのトレーニングを受けた当初は、なかなかうまくできず、悩んだ時期がありました。

けれども、多くの方とコーチングをしてきて分かったことがあります。それは、「フロー(流れ)」の重要性です。

そこで、本記事では、コーチングスキルをアップさせるための「フロー」についてお話します。

フロー(流れ)がないと会話をコントロールできない

コーチングスキルのトレーニングでは、傾聴や質問、承認などのスキルを学びます。

具体的なスキルとしては、傾聴は「オウム返し」、質問は「4W1H」、承認は「Iメッセージ」「YOUメッセージ」「WEメッセージ」などが一般的です。それぞれのスキルは技術的にもシンプルで、それほど難しくありません。

しかし、傾聴のスキルが身についたからといって、質問のスキルが身についたからといって、承認のスキルが身につたからといって、「どのように会話を組み立てたらいいのか」が分からないと、コーチングは上手くできるようにはなりません。

この問題を解決するのが、会話の「フロー(流れ)」です。

「フロー」があると、「最初はこれを聞いて、次はこれを聞いて……」のように、会話の流れを組み立てられるようになります。その結果、次に何を聞いたらいいか悩んだり、相手の話に振り回されたりすることが少なくなり、コーチングスキルがアップします。

「フロー」とは、まるで、おいしい料理を作るレシピのようなものです。おいしいカレーを作るためには、ジャガイモやにんじん、たまねぎといった、野菜の切り方だけを知っていても作れません。それらを炒め、ルーを入れて、味見をし、おいしい料理に仕立てる……つまり、食材を調理していく「流れ」が、おいしい料理を作るコツです。

コーチングフローとは?

コーチングフローは、コーチングの「会話の流れ」です。

筆者が初めてコーチングフローを知ったのは、コーチAのコーチトレーニングプログラムを受けたときです。

コーチングフローは、次のようなものです。

このモデルは、コーチングを上手く進める際の「会話の流れ」として、非常に優れたモデルです。

このモデルは、筆者の経験ではコーチングに限らず、順番を入れ替えることでカウンセリングにも使えるモデルだと考えています。なぜなら、コーチングとカウンセリングは、テーマの違いこそあれ、傾聴や質問と言ったコミュニケーションスキルには、大きな違いがないからです(参考:プロが教えるコーチングとカウンセリング3つの違いと2つの共通点)。

そこで、筆者は、コーチングフローを進化させて、「コミュニケーションフロー」と呼んでいます。この後は、コミュニケーションフローを元に話を進めます。

コミュニケーションフロー5つのステップ

コミュニケーションフローは、次のような流れです。

  1. 会話がスムーズになるように場を和ませる
  2. 望ましいゴールを明確にする
  3. 現状の課題や問題を確認する
  4. 現状と望ましいゴールのギャップを明確にする
  5. ギャップを埋めるための小さな行動を決める

コーチングの場合は、このステップ通りに行います。カウンセリングの場合は、ステップ2と3を入れ替えます。なぜなら、問題を抱えている場合は、視点が問題に向いていることが多く、望ましい未来を聞かれてもなかなか答えられないからです。

ステップ1:会話がスムーズになるように場を和ませる

ステップ1は「場を和ませる」です。

いきなり会話を始めるよりも場が和んでいたほうが話しやすいもの。天気の話や、ちょっとした笑い話など、ホッとできるような話題がいいでしょう。

また、ここでは、コーチングを通じて「何を得たいのか?」「何を解決したいのか?」を確認しつつ、時間を明確にしておくといいでしょう。次のように質問します。

「今から○時までお話しするわけですが、○時になったときに、何が得られていたらいいですか?」

ステップ2:望ましいゴールを明確にする

ステップ2は、「望ましいゴールを明確にする」です。

コーチングは、望ましいゴールを得たいための取り組みです。その背景には、「本当は○○したい」という気持ちが必ずあります。それを明確にします。次のように質問します。

「今、得たいゴールは何ですか?」

その後、4W1H等の質問を繰り返しながら、さらに具体的にしていきます。質問例は、プロも実践!簡単で効果的なコーチング10の質問リストも参考にしてください。

ステップ3:現状の課題や問題を確認する

ステップ3は、「現状の課題や問題を確認する」です。

コーチングもカウンセリングも、「本当は○○にしたいけれど、現状はそうなっていない」という課題があります。次のように質問します。

「今、お困りのことは何ですか?」

その後、4W1H等の質問を繰り返しながら、さらに具体的にしていきます。

ステップ4:現状と望ましいゴールのギャップを明確にする

ステップ4は、「現状と望ましいゴールのギャップを明確にする」です。

ステップ2と3によって、望ましいゴールと現状の課題が明確になっています。そのため、理想と現実の間のギャップを埋めるためには、何が必要か見出しやすくなっています。次のように質問します。

「現実を理想に近づけるためには、必要なことは何でしょう?」

プロも実践!簡単で効果的なコーチング10の質問リストにある「数値化」も、非常に有効です。

「理想的な状態が10点満点だとしたら、今、何点?」
「10点満点にするためには、何が必要でしょう?」

ステップ5:ギャップを埋めるための小さな行動を決める

ステップ5は、「ギャップを埋めるための小さな行動を決める」です。課題や問題は何かしらの行動によって解決します。そこで、次のように質問します。

「理想に近づけるために、ちょっとがんばればできそうなことは何でしょう?」

ステップ4で数値化を使ったなら、

「今の状態から1点上げるために、できそうなことは何ですか?」

とするのもいい方法です。

ポイントは、「ちょっとした努力で(あまり頑張ることなしに)」できることを挙げることです。小さな行動、小さな成功体験が、次の行動につなげてくれます。

まとめ

コーチングスキルをアップさせる、「フロー」についてお話しました。

コーチングスキルは、知識を身に着けたらすぐにできるものではないかもしれません。だからといって、やみくもにチャレンジしても効率が悪いばかりか、下手なコーチングは、コーチングの役目を果たさなかったり、相手との関係を悪くしてしまったりする恐れがあります。

コーチングスキルをアップするためのポイントは、「フロー」です。意識的にコーチングを行うと、迷いがなくなり、会話をうまくコントロールできるようになります。

会話の「型」と言ってもいいかもしれません。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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